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「なに?U主が倒れた?!」
ビクトールとフリックが知らせを受けて、U主の部屋へと走った。
U主が倒れたのは大広間の前。
シュウにルルノイエへ進撃すると宣言したすぐ後だ。
見付けたのはフリード。
フリードは慌てふためいて青い顔で運んだ様だ。
「まったく、驚かせやがって」
酒場でビクトールは笑いながら隣のフリックを見た。
U主の事は寝かし付けてきた。
「本当だ!まぁ、無事でやる気があるんだ。良いだろう」
フリックはそう頷いた。
「ねぇ、フリック」
レオナがフリックを呼ぶ。
「なんだ?」
フリックはレオナを振り返る。
「それが……」
「おーい!アシタノ城の近くで変な音を聞いた奴がいるんだ。手が空いてたらちょっと来てくれ!」
レオナが声を出だしたが、酒場に入ってきたギムジが叫んだ。
「おお!どうせ酒飲んでるだけだからな」
ビクトールが席を立つ。
「俺も行く。レオナ、後で良いか?」
フリックも立ち上がりレオナを振り返る。
「あ、ああ。まぁ、平気だろうね。ここが堕ちたら大変だ。宜しく頼むのよ」
レオナはそう口を開いた。
「ああ、任せろ」
フリックは青いマントを翻して酒場を後にした。
「○○、どこに行ったのかね?注文取れないじゃないか」
レオナはそう苦笑した。
少し前、○○は酒場の仕込みを終えて休憩を取っていた。
「もうすっかり暗くなっちゃったなぁ」
○○は図書館近くの道を歩いていた。
すでに他の人はまばらで、その人達も城へと帰って行く時間帯だ。
酒場では人も多く、もちろん酒も出回るので熱気と酒の臭いで時々外の空気を吸わないと疲れるのだ。
「ふうー。ん?」
○○は不思議そうに反対方向の空を見上げる。
「あ!○○姉ちゃん!どうした?」
近くを通りかかったウイングボードのチャコが不思議そうに○○に近付く。
「あ!チャコくん!あれ、何かな?」
○○は不思議そうに反対方向の空を指差す。
「あ?何か明るいし、怪しいな!」
チャコが目を凝らす。
「チャーーーーコーーーー」
「ひいいぃぃぃ!!!」
「きゃぁぁぁ!!」
地を這う様な低い声が響き、チャコと○○は同時に悲鳴をあげ、抱き合った。
「し、シド!!」
チャコが声をあげた。
「なにしてるんだ、チャーーーーコーーーー」
シドはニヤニヤと笑いながらチャコに近付く。
「し……シドくん、こんばんは……」
○○は目に涙を溜めて、シドに挨拶をする。
「……。なにしてるんだぁ?」
シドはちらりと○○を見るがすぐにチャコへと視線を戻した。
「あ、あっちの空になんかあったんだよ!」
チャコが指を指して言う。
「………………チャコは誰かに知らせて来い」
シドはそれだけ言うとチャコの指差した方へ歩き出す。
「………………見に行ってくれたのかな?」
○○は不思議そうにシドの背中を目で追った。
「っ!お、俺、誰かに知らせてくる!!」
チャコはそう叫ぶと○○から離れ、走り出した。
「……な、何もないと良いんだけど……」
○○は不安そうに呟いた。
○○はアシタノ城に歩き出す。
他の人はすでに誰もいない。
「っ!!!」
急に後ろから口許を押さえ付けられる。
ぞくりと嫌な汗が背中に流れる。
慌てて暴れるが、手が振りほどけないどころか、逆の手で、羽交い締めにされる。
「っ!!!ーーー!!!」
叫ぼうとするが、しっかり口を押さえられていて声も出ない。
紋章も声が出なければ発動しない。
○○は恐怖でおかしくなりそうになりながらも、何とか暴れる。
○○を拘束する人物は軽々と暴れる○○を引き摺り、誰もいない展望台へと連れ込む。
「っ!!!」
そして、展望台のドアが閉められ、閂がかけられた。
「で?結局何も無かったのか?」
ビクトールがフリックとギムジと一緒にシドの所へとやって来た。
「…………」
シドはニヤリと笑うだけ。
「おいおい、しっかりしてくれよ!」
フリックが呆れた様に呟いた。
「おい!どうだった?!」
チャコが走って来た。
「あ?何もないとよ」
ギムジも呆れながら言う。
「シドのイタズラじゃかいのか?」
ギムジの言葉にチャコがキッと睨み付ける。
「そんな訳あるか!!俺と○○姉ちゃんで見たんだ!!そこに逆側から出てきたシドがどうやってイタズラするんたよ?!」
チャコはそう捲し立てる。
「うーん、でも何もないしな」
ビクトールが不思議そうに言う。
「まぁ、城の警備を厚くしよう」
フリックが頷いた。
「そうだな。もう誰も外に出さない方が良いな」
ギムジも頷いた。
「な……何で……」
○○は驚いて自分をここに閉じ込めた人物を見上げた。
「何で貴方がここにいるのよ?!」
○○は叫んだ。
「お前に会いに来たんだよ。○○」
赤髪を揺らしながらシードがニヤリと笑った。
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