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一日目は診療所を出て宿屋に連泊を申し出た。

部屋は古いが、綺麗に掃除されている部屋だった。

とりあえずはのんびりと過ごす事にする。

自分の感覚では毎日毎食食事を作り続けていたのだ。休みの日などなかった。

これは神様がくれた休暇と思うのが良いだろう。

○○の一日目が終わった。



二日目は朝から診療所へと行き、診察を受ける。
まだ記憶は戻っていないが、あせる事はないと言われた。


「気持ち良い」

○○は森に囲まれた町でのんびりと散歩を楽しんでした。
小さな湖があり、散歩コースには持ってこいの場所であった。

○○がのんびりと歩いていると鳥が集まっている所があり、行ってみる事にした。

(人がいたんだ)

○○は男が木に寄りかかり目を閉じているのを見付けた。

男の手にはパンが握られていて、鳥たちはそれを食べに集まっているようだった。

(……寝てるのかな?起こしちゃまずいよね)

○○は静かに男を起こさない様に通り過ぎる事にした。

ちらりと見ると赤毛で、赤と白の服が目立った。

○○はそっと隣を通り過ぎた。

「キャッ!!」

急に腕を引かれ、振り返ると今まで寝ていたはずの男が驚いた顔をして○○の手を握っていた。

「○○……か?まさか!なんでここに?」

男は驚いた声を出した。

「え?私を知ってるんですか?」

キョトンとした顔で○○は男を見た。

「知ってるも何も……」

男は眉間にシワを寄せた。

「あ、怪しまないでください!私、今ちょっと記憶喪失で、ここ数ヵ月の記憶が無いんです」

○○は困った様に笑った。

「記憶が……無い?」

男は不思議そうに声を出した。

「はい。なので、私的には初めてお会いする形になってしまって……。申し訳ないです」

○○は申し訳なさそうに頭を下げた。

「そう……なのか?俺の事も忘れてる……のか?」

男は真偽を確かめようとするように○○をジロジロと見た。

「はい。残念ですが」

○○は困った様に笑い、その場に座った。
手はまだ男に握られている。

「あの、出来たらお名前を教えて貰えますか?」

○○はおずおずと聞いた。

「…………シードだ」

男ーーシードはじっと○○を見つめていた。

「シードさん!素敵なお名前ですね!」

○○はにっこりと楽しそうに笑った。

「っ!!」

シードは不意打ちの笑顔に顔を赤くした。

それもそうだ。

○○からの敵意も緊張も感じない顔は初めてなのだ。

そして、邪気のない笑顔も。


「さん付けなんて止めてくれ、よそよそしい」

シードはそう笑った。

「え……と、じゃあ、シード。あなたも同盟軍の一人?」

○○は不思議そうにシードを見る。

「いや、俺はお前の恋人(になる男)だ」

シードはニヤリと笑った。

「え?…………ええ?!!」

○○は驚きながら声をあげた。

「そ、そうなの?」

○○は顔を真っ赤にしてシードを見た。

「ああ」

シードは頷いた。

「本当に?」

「もちろん」

「からかってる?」

「するか」

○○の焦った質問に当たり前の様に頷くシード。

(え?今の私はフリックと付き合ってるのかと思った!って事はフリックには勘違い?!は、恥ずかしい!!)

○○は真っ赤になった顔を両手で覆った。

「で、でも、何でシードは一人でここにいるの?」

○○はシードを見上げた。

「お前に会えたから忘れちまった」

シードはニヤリと笑った。

「……」

○○はシードの笑顔に見とれた。

「ところで、何で記憶喪失なんかになったんだ?大丈夫なのか?」

シードは少し心配そうに○○を見た。

「え、うん。何か、子供に激突されたみたい。頭にこぶも出来たし」

○○はそう笑った。

「こぶ?それは痛かったな」

シードは○○の頭を撫でた。

フリックとは違い、隠さない好意の視線に○○は恥ずかしそうにした。

「で?久し振りに会った恋人になんもなしかい?」

シードはニヤリと○○を抱き寄せる。

「っ!!わ、私としては、会って数分しか経ってないんだけど」

○○は顔を真っ赤にしてシードを見た。

「そうだったな。じゃあ、抱き締めさせてくれ」

シードは真剣な顔で○○を見つめた。

「う、うん」

あまりの真剣さに、座ったままの○○はされるがままに抱き締められた。

「………………柔らけぇ…」

シードは○○の胸辺りに頭を押し付けて言った。

「っ!ちょっ!」

○○は怒った様に声を出した。

「それに良い匂いもするな」

シードはぎゅっと腕に力を入れた。

「………………○○、もうどこにも行かないでくれ」

シードは弱々しく呟いた。

「……シード?」

何故だか似つかわしくないと思った○○はシードの頭を優しく撫でた。

「……ごめんね、思い出せなくて」

○○は申し訳なさそうにシードを撫でる。

「……最初からやり直せるんだ。何も不満はないぜ」

シードはニヤリと笑ったが、その顔は何だか寂しそうに見えた。

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