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アシタノ城に戻って来ると、部屋の様子が変わっていた。
「どう言う事だ?」
フリックは不思議そうにする。
「あ!間に合いましたか?部屋が変わったんです!」
アップルがクラウスを引き連れてやって来た。
「部屋が?」
ビクトールはアップルを振り返る。
「この上の階になります。荷物も運んでありますのでどうぞ」
クラウスはにこりと笑った。
移動すると、ビクトールとフリックの部屋が別々に用意されていた。
「やっと一人部屋か!」
ビクトールは嬉しそうに笑った。
「お前のイビキを聞かなくて済むのはありがたいな」
フリックは頷いた。
「あ、あの、アップルちゃん?」
○○がおずおずと口を開く。
「はい?」
アップルが○○を振り返る。
「私の部屋は?」
○○がそう尋ねる。
「え?フリックさんと一緒で良いでしょ?」
アップルは不思議そうにする。
「な、何故?」
○○は困った顔をする。
「ニナから聞いたけど、貴方達結婚してたのね」
アップルは事も無げに言う。
「してないよ!って、それってグリンヒルに潜入した時の事でしょ?」
○○は慌てて反論する。
「そうなの?でも同じでしょ?」
アップルは知ってるとばかりに頷いた。
「………………違います」
○○は頭を抱えて項垂れる。
「困ったわね。部屋数は結構ギリギリなのよね。前の部屋はツァイさんとトモが使ってるのよ。親子でも女の子だから、喜んでたわよ」
アップルは眉間にシワを寄せ、笑った。
「…………そうなんだ。でも、フリックにも迷惑かけちゃうし……」
○○も困った様に声を出す。
「まぁ、少し考えておくわ。とりあえずはフリックさんと一緒で良い?」
「………………分かった」
アップルの言葉に仕方なく頷いた。
「じゃあ、また何かあったら言ってね!」
そう言ってアップルは忙しそうに走り去った。
「はぁ……」
ーーコンコン
「入るよ?」
「おう」
ドアを叩くと、中からフリックの声がして、中に入る。
「どうした?」
フリックは荷物を確認しているところだった。
「なんかね、手違いがあって」
「手違い?」
フリックは手を止めて○○を振り返る。
「でね、とりあえず部屋が決まるではここにいても良いかな?」
○○はアップルとの会話をフリックに聞かせる。
フリックはすでに荷物の整理を終えてベッドに座っている。
「あ、なんならヒルダさんの宿屋に行こうか?それなら酒場も近いし」
○○はぽんと手を叩いた。
「あ?いや、意味が解らない」
フリックは不思議そうにする。
「え?だから、一緒の部屋じゃ迷惑でしょ?」
「何でだよ?」
フリックは立ち上がると○○に近付く。
「むしろ邪魔者がいなくなって良いだろ?」
フリックはにやりと笑った。
「え?それって……」
ぞくりと体が震える。
「むしろお前と同室じゃ無い方がおかしいだろ?それとも俺と一緒じゃない方が良いのか?」
フリックは真剣な顔をする。
「…………そんな事はないけど……フリックが同じ部屋にいるのに慣れるのが……怖いかな」
○○は小さく苦笑した。
「怖い?」
「うん。前の時は一応私の個室があったから大丈夫だったけど、一人でフリックの居ない部屋で待つのは……寂しいよ」
○○は寂しそうに笑った。
「○○……」
フリックは○○を抱き締める。
「えへ、ごめんね。これじゃあダメなのは分かってるんだけどなぁ。フリックに甘えてるなぁ、私」
○○はフリックを抱き返す。
「良いんだよ、それで」
フリックは小さく声を出す。
「俺に頼れよ。甘えろよ。ちゃんと受け止めてやるから」
フリックの声は真剣な響きだった。
「っ!!うん」
○○はゆっくりとフリックから離れるとフリックの目を見て微笑んだ。
「さて!そうと決まれば私も荷物片付けちゃおう!」
○○は嬉しそうに荷物に取りかかる。
「………………おい」
フリックは○○を見る。
「え?なに?」
○○は手を休めずに聞く。
「何でそうなるんだよ!雰囲気的に、こう!」
フリックは顔を赤くして声を出す。
「え?!ひ、昼間ですけど!」
○○も顔を赤くしてフリックを見る。
「…………はぁ」
フリックはため息をもらすとベッドへ転がる。
「と、とりあえず片付けちゃうね?」
「……」
フリックの反応が無いのを気にしながらも荷物を整理する。
服を洋服ダンスにかけ、化粧品などを机に並べる。
「ねぇ、フリック。ここの空いてる引き出し使って良い?」
「お前の為に空けてあるんだよ」
「あ、ありがとう」
寝転がったままフリックは声を出す。
「よし、終わっ!!!」
○○がそう呟くとフリックにベッドへと引かれる。
「ちょ、フリック……さん?」
○○はフリックによってベッドに組み敷かれている。
「終わったなら良いだろ?」
フリックはにやりと笑った。
「っ!!」
何か言う前にフリックは自らの口で○○の口を塞いだ。
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