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灯竜山の山道にたどり着いたU主一行。
「あそこの先にいたんです!」
U主はにっこりと笑って指を指した。
「まだいるかな?」
ナナミは少し不安そうに声を出した。
「大丈夫だよ!」
どこから来るのかU主は自信たっぷりに言う。
「○○、大丈夫か?」
フリックは○○を振り返る。
「うん!いっぱい寝たから体力も戻ったし!気持ちも良いよ!」
○○は血色の良い顔で楽しそうに笑う。
「よし、なら頑張れな!」
ビクトールが○○の背中に背負ったリュックサックを軽く叩いた。
「うん!」
○○はビクトールを見上げて笑った。
「あれは、ゲオルグ・プライムじゃねーか……」
U主と何やら話し込んでる男を見てビクトールが驚いた様に声を出す。
「本当か?俺は初めて見る」
フリックまでもが少し興奮した様に声を出す。
「ゲオルグ?」
○○は男ーーゲオルグを見ながら不思議そうに声を出す。
「赤月帝国時代に六将軍として活躍した男だ」
フリックがゲオルグから目線を外さずに言った。
「確か、フィレナ女王国でも女王騎士として地位も名誉も手にしてるはずだぜ?」
ビクトールがそう付け加える。
「色んな所で活躍した人なのね?」
○○はゲオルグをじっと見る。
「ああ、大物だな」
フリックは頷いた。
「ならば、約束してくれ。この戦いから逃げないと」
「はい!」
ゲオルグの言葉にU主は力強く頷いた。
「良かったね!U主!!」
ナナミは嬉しそうに笑った。
どうやら仲間に引き入れる事に成功したようだ。
「……」
「??」
○○はゲオルグと目が合い不思議そうに見上げる。
「時にお嬢さん」
「え?私?な、何ですか?」
ゲオルグがにこりと笑いながら○○へ近付く。
反射的にフリックのマントを握り締めた。
「とても甘くて良い匂いがするのだが」
ゲオルグは顔を○○に近付ける。
「え?あ?も、もしかして……」
ゲオルグの行動に○○は顔を赤くしてリュックサックを下ろし、中を探す。
「こ、これかな?」
○○は多く作ったカップケーキを取り出した。
「うん、これだ。良かったらこれをおじさんにくれないかい?」
ゲオルグは頷いた。
「へ?あ、良いですよ!はい!」
○○はにっこりと笑ってカップケーキを差し出した。
「ありがとう」
ゲオルグはさっそくカップケーキを袋から取り出して一口で食べた。
「うん!旨い!」
ゲオルグは嬉しそうに笑った。
「本当ですか?良かった!」
○○も嬉しそうに笑った。
「でしょ?○○さんはうちの優秀なコックの一人だからね!」
U主は自慢気に腰に手を当てた。
「ほう!コックだったのか」
ゲオルグがにこりと○○を見た。
「お嬢さんお名前は?」
「○○です」
「では、○○。宜しく頼むよ。俺は甘い物に目がなくてね」
ゲオルグはにっこりと笑った。
「あ!私も甘い物大好きです!じゃあ、ゲオルグさんには新作が出来たら味見して貰います!」
○○は楽しそうに笑う。
「それは楽しみだ」
ゲオルグは心底嬉しそうに笑った。
「…………イメージ違うんだが」
フリックは不思議そうにゲオルグを見る。
「…………俺もだ」
ビクトールも頷いた。
戦闘ではビクトールとフリック、そしてゲオルグがほとんど敵を倒して行った。
中でもやはりゲオルグの強さは圧巻であった。
「凄いよね!じいちゃんも強いと思ってたけど、強い人って世の中にいっぱいいるのね!」
野宿が決定し、火を囲んで座りながらナナミがそう声を出した。
「はは、ゲンカク殿と並べて貰えるのは嬉しいな」
ゲオルグがそう笑った。
「甘い物かな?ねぇ、○○さん!甘い物を僕にも作って!」
U主が鍋をかき混ぜる○○に言った。
「ふふ、良いよ。アシタノ城に帰ったらケーキでも焼こうか?」
○○は楽しそうに笑った。
「それは良い!」
ゲオルグも嬉しそうに頷いた。
「好きだねぇー」
ビクトールが呆れた様に口を開く。
「あ、ならビクトールのお酒も甘い物にしようか?」
○○はクスクスと笑う。
「止めてくれ」
ビクトールは嫌そうに顔をしかめた。
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