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フリックと○○と入れ換わる様に、U主とナナミとを守ったカミューとマイクロトフがシュウとアップルに付いてアシタノ城へ帰って行った。
「よし、じゃあクロムへ行こう!ビクトール達が待ってるぜ」
フリックは明るくU主の肩を他叩いた。
「うん、ごめんなさい、フリックさん」
U主はにこりと笑った。
「気にすんな」
フリックを先頭に4人はクロムを目指した。
「お!遅かったなU主!ナナミ!今日は疲れただろう!上でゆっくり休みめ、な!」
ビクトールは明るく何も無かった様にU主とナナミを部屋へと押した。
そして、ビクトール、○○、フリックが同じ部屋に集まった。
「…………はぁ」
ビクトールは○○の姿を確認すると盛大なため息をついた。
「えへ、来ちゃった」
○○は気まずく、そうおどけた。
「来ちゃったじゃねーだろ!!」
ビクトールは珍しく怒鳴る。
「だ、だって!シュウ軍師が!それにフリックもいるし!」
○○はビクトールの声に少し怯える様に声を出す。
「だからって、ここがお前にとって危険なのは分かってるんだろ?」
ビクトールは厳しい口調で言った。
「……分かってるよ。でも、私ならU主君が、真の紋章がすぐに分かるから……」
○○は落ち込んだ様にうつ向く。
「だからってな!!」
「……それに…………やっぱり私にとってビクトールは大切な……特別な仲間だもん」
「お前……」
ーーガチャリ
「なんじゃ、騒々しいのう」
ドアを開けて入って来たのは白い肌に白い髪、赤い目の美しい少女だった。
「……関係ないだろ」
ビクトールは嫌そうに美少女を見た。
「ほう、小娘。おんしからわらわの月の紋章の気配がするな」
美少女は○○に近付く。
「え?月の紋章って……ネクロードの?」
○○は美少女に目を奪われていたが、何とな頭を働かせた。
「そうじゃ。あれは元々わらわのものだ。おんし、名は?」
美少女はベッドに腰かけると○○を隣に誘う。
「あ、○○です」
○○はどう見ても年下の美少女に年上、それも何倍も離れている様に感じた。
「そうか、○○」
美少女は○○を舐めるように頭の先から爪先まで見た。
「おんしがネクロードに狙われるのはわかる。魔力のせいじゃな」
美少女は○○の頬に手を添える。
「ま、魔力?」
「そうじゃ。真の紋章に魔力を与えると色々とできるからのぅ」
ニヤリと美少女は笑うと○○の首筋に唇を寄せる。
「痛っ!!」
○○は突然の痛みに目をぎゅっと閉じた。
「おい!」
「シエラ!」
フリックが○○を抱き寄せ、ビクトールが怒った様に美少女ーーシエラの肩を掴んだ。
「大丈夫じゃ、少し噛んだくらいじゃ吸血鬼にはならんぞよ」
シエラはニヤリと妖艶に笑った。
「うむ、しかし、女の血にしては美味だな。○○、もう少しくれんかの?」
シエラは美しく笑いながら○○を見た。
「い……」
「○○!!」
どさりとベッドの上に倒れ込む○○。
「吸い過ぎだ!!」
ビクトールがシエラに怒鳴る。
「ふふ、これくらい吸えば明日は付いてはこられまい。わらわも魔力を吸えたし、ネクロードに○○の魔力を取られるのはさすがのわらわでもちとキツイのでな」
シエラはニヤリと笑った。
「…………そうか、そうだな」
ビクトールは血色の少し悪い○○の寝顔をチラリと見た。
「わらわは寝るとする」
あくびをしながらシエラは部屋を後にした。
「……何だったんだ、あいつは?」
フリックが訝しげに部屋のドアを見た。
「真の月の紋章の元々の持ち主で吸血鬼だ。ネクロードを封じる力がある」
ビクトールは息を吐きながら空いているベッドに腰かける。
「ネクロードを封じる女……か」
フリックは納得した様に頷いた。
「しかし、○○が来るとはな」
ビクトールはため息をついた。
「いやに引っ掛かるな」
フリックは○○の眠るベッドに腰を下ろしてビクトールを正面から見る。
「……まぁな」
ビクトールは星辰剣を取り、ブーツなどを脱いでベッドに寝転がる。
「まぁ、大体お前達の様子見てりゃあ、何となくは解るぜ」
フリックはビクトールをチラリと見る。
「そうかい」
ビクトールは少し驚きながらもフリックを見た。
「まぁ、俺は振られちまったからな。○○をどうこうするつもりは無いぜ」
ビクトールは真剣に言う。
「分かってるよ。これでもお前の事は信用してるんだぜ、少しはな」
フリックはニヤリと笑った。
「……それはありがとよ」
ビクトールはフリックの言葉に驚きながらも、そう笑った。
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