君のいる部屋4


「……お頭来なかったな」

ヤソップがポツリと呟いた。

「無断欠勤なんてする人じゃないんだけどな」

ルゥも不安そうに声を出す。

「あれじゃないか?久し振りに○○と宜しくヤってるんじゃねェのか?!」

ヤソップが慌てて明るく声を出す。

「電源切ってまでか?」

ベックマンがやれやれと携帯を掲げる。

シャンクスと連絡が取れなくなって丸1日が過ぎようとしていた。

電話も「現在電波の届かない所にいるか、電源が入っていない為、かかりません」だ。

「俺が様子を見に行ってくる。今日はもう帰れ」

ベックマンが幹部達に指示をして、自分はシャンクスのマンションへ行く為に準備をした。







君のいる部屋4








「別れましょう」

そう、凛とした声を出したのは彼女だった。

「は?なんで?」

シャンクスは驚いて珈琲を吐き出しそうになった。

「私を馬鹿にしてるの?」

「してねェよ!」

彼女の言葉にシャンクスは訳がわからず声を出す。

「私はね、自分の男が自分に興味がなくなったと解ってもすがり付く様な女じゃないの」

彼女は珈琲を口にする。

「これでも、貴方の興味が離れはじめてから色々と手を尽くしたつもりよ」

彼女は真正面からシャンクスを見つめた。

「それでも貴方の心が私に帰って来る事はなかったわ」

「…………悪ィ」

彼女の感情の籠らない声にシャンクスはポツリと呟いた。

「良いのよ。離した私にも非はあるわ」

彼女は珈琲を飲み干した。

「お前、やっぱり良い女だな」

「今更気付いても遅いわよ」

彼女はにこりと笑った。

「そうだな。すまない」

「謝らないでよ。惨めになるじゃない」

シャンクスは申し訳なさそうに縮こまる。

「その代わり貴方に貰ったものは返さないわよ。売ってお金にするんだから」

彼女は面白そうに笑った。

「…………愛してたよ」

シャンクスは真剣な顔をした。

「私もよ。さようなら」

彼女は颯爽と立ち去った。









シャンクスは○○と数回デートを重ねていた。

彼女と別れて余計に○○への感情が膨れてきた。

目の回る程忙しい日々の中で何とか時間を見付けては○○とのデートに当ててきた。

ホワイトデーから日数だけが刻々と過ぎた。

本来ならもう何度もデートをしている筈だが、急な仕事も多く、泣く泣く断りの電話を入れる事も多々あった。

「これが身を切る様な思いってやつか」

シャンクスは今しがた断りを入れた電話を寂しげに見る。

「おい!お頭!!そんな余裕はねェ!!!仕事しろ!!」

ルゥが怒鳴る様に叫ぶ。

「だってよー。本当なら今日はこれから○○と夕飯だったのによー」

シャンクスは携帯を握り締めて泣きながら言う。

「お頭コノヤロー!!俺だって可愛い息子家に一人にしてここにいるんだぞ!!!」

ヤソップも怒鳴りながらも手を動かす。

「何が悲しくて野郎ばかりと残業……」

シャンクスはシクシクと泣き始める。

「「お頭!!!」」

ルゥとヤソップが同時に叫ぶ。

「あ!何しやがる!ベック!!」

ベックマンがシャンクスから携帯を取り上げ、何やら操作する。

「ほら、仕事しろ」

紫煙を吐き出すと、ベックマンは仕事に戻った。

「って!!○○の所だけロックかけやがった!!おい、こら!ベック!!ロック解きやがれ!!」

シャンクスが携帯をずいっとベックマンに掲げる。

「うるせェ。とっとと仕事やらねェなら番号消すぞ」

どすの効いたベックマンの怒りにさすがのシャンクスも背筋を正した。

「やるよ!やれば良いんだろ?!」

「当たり前だ。お頭の会社だろ」

ベックマンが静かに言う。

「…………おう!!上等だ!!」

シャンクスは鼻息荒く仕事に取りかかった。








「私、やっぱりシャンクスさんの事、好きです!付き合ってください」

○○からの二度目の告白で晴れて付き合うようになった二人。

帰りの車の中でシャンクスの頭の中は暴走寸前だった。

(○○が俺の恋人か。って事は手ェ出しても良いんだよな?)

シャンクスはちらりたと○○を見る。

まだ緊張したように前を向いていた。

(あァ、可愛いな。でも、あれだよな。俺の方が大人だしな。いきなり襲って『想像と違う!』とか嫌われたら最悪だよな)

シャンクスは妄想の中の○○に罵られてショックを受けた。

(ここは、大人らしく。紳士的に……)

「シャンクスさん?」

○○は黙ったままのシャンクスを不安そうに見上げる。

「うお!どうした?」

シャンクスは驚いた声を出す。

「私のアパート通りすぎましたよ?」

○○は申し訳なさそうに後ろを指差す。

「あ?いや、悪い。考え事してた」

シャンクスは角を何度か回り、アパートの前に出て、車を停めた。


○○が車を降り、運転席へ回る。

「じゃあな」

シャンクスが車の中から声をかける。

「あ、あの!」

「ん?」

「お、お茶でも……」

○○は意を決してシャンクスを誘う。

「……………………あァ」

シャンクスは緩みそうになる顔を引き締め、難しい顔で頷いた。

「どうぞ!」

○○は嬉しそうにシャンクスを部屋に招いた。








「……私の事、嫌い、ですか?」

○○の少し赤い顔にシャンクスはにやけそうになる顔を引き締める。

「……いいや」

「……私の事、好き……ですか?」

「………………そう、だな」

○○は嬉しそうに笑って、自らシャンクスに口付ける。

「……今日は、帰らないで、欲しいです」

○○が座るシャンクスにじわりと寄る。

「……」

シャンクスは嬉しすぎておかしくなりそうな体を必死に制した。

○○がシャンクスを押し倒す様に口付けをする。

「んっ!」

くるりと体が回転し、○○とシャンクス の位置が入れ替わり、シャンクスに押し倒される形になった。

「……どうなっても知らねェよ?」

シャンクスがニヤリと笑う。

「わ、私が誘ったの!」

○○は真っ赤になりながらも声をあげた。

(まさか、こんなになって、朝起きたら夢でしたとかねェよな?)

あまりに上手く行き過ぎて、シャンクスはやや不安になる。

しかし、体は正直に○○を求めた。







一度だけでは熱は収まらなかったが、○○の満足そうな顔に全力で自身を鎮めるのに苦労したシャンクスだった。



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