君のいる部屋10
「よし、んじゃま、これを片付けるか!」
シャンクスは今しがた○○と過ごした部屋から持ってきた荷物を久し振りに帰ってきたマンションへと運び込んだ。
君のいる部屋10
あれから3ヶ月。
居酒屋は最初の1ヶ月で辞めさせられていたが、スーパーのパートタイマーは3ヶ月きっちりと働いた。
○○は優秀な従業員の様で、なかなか辞められなかった。
だが、○○の妊娠と、赤髪と言う一流会社からの圧力で、何とか無事に退社する事が出来たのだ。
余談だが、そのスーパーは株式会社赤髪との確かなパイプラインを繋げ、大きく成長を遂げた。
かなりしたたかな店長であった。
「これで最後だ」
シャンクスは最後の段ボール箱を部屋に入れた。
シャンクスの荷物も増えていたので、意外と大荷物になったのだ。
「お疲れ様!」
○○はにこりと笑った。
「あァ。体調はどうだ?」
シャンクスが段ボールを開けている○○の前に座った。
「ん!今は気分が良いの。だから、やっちゃうね!」
「わかった。ただし、気持ち悪くなったら、すぐ止めろ」
良いなとシャンクスがきつく言う。
「はーい」
○○はクスクスと笑った。
「あ、そうだ!……ねぇ、シャンクス」
思い出した様に○○はシャンクスに声をかけた。
「ん?」
「あの、あれは?アルバム」
言いにくそうに○○がシャンクスを見上げる。
「おう」
シャンクスは本棚から大事にアルバムを抱えて○○に差し出した。
ごみ袋から出されたそれらは、大切に保管されていた。
「…………良かった」
○○はギュッとアルバムを抱き締めた。
「もう、ここには、帰って来られないって、思ってた!良かった!」
○○は感情が溢れ出る様に泣き出した。
「○○、お帰り」
シャンクスが座り込む○○の頭を優しく撫でた。
「っ!!!た、ただいまぁ!!」
○○は堪らずシャンクスに抱き付いて涙を流した。
シャンクスは穏やかに○○の背中を撫で続けた。
どのくらいそうしていたか、○○は落ち着きを取り戻した。
「ご、ごめんね、シャンクス。やっぱり妊娠って情緒不安定かも」
○○は照れ笑いを浮かべてシャンクスから少し離れた。
「お前が帰って来てくれて、本当に嬉しいよ。ありがとうな、○○」
目を見て噛み締めながらその言葉を口にした。
「シャンクス……」
シャンクスの言葉に再び目元がうるりと滲む○○。
その目元をシャンクスは優しく親指で拭う。
「泣かせようとしてる?」
「いや?素直にそう思ってる」
○○の言葉にシャンクスがニヤリと答える。
「もー!」
○○は拗ねる様に口を尖らせる。
「さぁ、片付けよう。○○が帰ってきたって実感できる部屋にしような!」
シャンクスは再び腕捲りをすると、段ボールに手をつけた。
「うん!」
○○は幸せそうに頷いた。
大切な君と
これから産まれてくる大切な君と
そして、おれのいるべき部屋
ここがおれたちの帰るべき部屋
君のいる部屋
(完)