片付く部屋8


「これは、要らない。これはいる」

あれから3ヶ月後、また荷造りをしていた。







片付く部屋8








すぐに連れて帰ろうとするシャンクスに「仕事、シフト入ってるから辞められない」と、何とか3ヶ月我慢してもらう事にした。

「私はずっと我慢してた」

○○のぽつりともらした一言が効いたらしい。
それならばと、シャンクスが○○の暮らすアパートに転がり込んできた。

「やっと想いが通じたんだ!何で離さなきゃいけないんだよ!」

と、言うのがシャンクスの言い分らしい。
今までこんなに(○○の事で)強気に出た事の無いシャンクスに少々戸惑った。

付き合ったのも、結婚したのも、子供が欲しいと言ったのも全部自分からだった。
だから、○○からシャンクスへの気持ちが多いと思っていたのだが、実際は違ったようだ。



シャンクスが仕事を辞めさせたのも、浮気がしやすい様にではなく、○○を他の男の目に触れさせない為である。

いつも、シャンクスが誘わないのは、一度でも誘ってしまえば毎日でも、何回でも、無理矢理でもしたくなるので、○○のペースに合わせていただけらしい。

キスも一度自分からしてしまうと、時も場所もわきまえられなくなってしまうからだと言う。


「俺は○○が思ってる様な紳士的でも出来た人間でもねェんだよ」

と、拗ねた様に言う姿はとても可愛らしかった。

「それでも良いから愛情が欲しかった」

と○○が言った瞬間、押し倒されたのは言うまでもない。





誤解に誤解を重ね。

不器用に人を愛して、不器用に相手を気遣った2人。

素直に甘える事を知った今はとても幸せそうである。








「おーい、来たぞ!準備出来たか?」

「あ!はーい!」

すっかり片付いた部屋にシャンクスがやって来た。

「これだけか?」

「うん」

箱に詰められた愛着のある品々。
前に一人この光景を見た時は辛くて寂しくて虚しくて。
そんな感情しかなかった。
しかし今は愛しくて仕方がない。


「よし、運ぶぞ!」

シャンクスはそこからひとつを大事そうに持ち上げた。

「よいしょっと」

○○もシャンクスに見習い、持ち上げる。

「おい!○○は持つな!」

シャンクスは怒る様に声を出す。

「大丈夫よ!これくらい!」

「大丈夫じゃねェ!!今が一番大事な時期だろ?!」

シャンクスはバッと○○の手から箱を取り上げ、軽々と持つ。

「大丈夫なのに……」

それでも○○の顔は嬉しそうだ。

「わかんねェだろ?お前、人の親になるってのに自覚がないのか?!」

シャンクスはニヤリと笑う。

「……すみません」

○○は苦笑しながら頭を下げる。
まさか、自分の言った言葉を返されるとは思っていなかった。

「よし!素直に俺の言う事聞いてな」

シャンクスは次々と車に荷物を積める。

「終わったな!」

「この部屋意外と広かったんだね」

○○はお世話になった部屋を見渡した。

「もう、ここには用はないな?」

シャンクスが○○の手を取る。

「……うん」

「よし、帰ろう。我が家へ」

シャンクスは穏やかに笑う。

「うん!気持ち悪いしね」

○○は少し困った様に笑う。

「お、おい、大丈夫なのか?」

シャンクスは眉間にシワを寄せる。

「慢性的な二日酔いみたいな感覚かな」

「…………そりゃ、つらいな」

シャンクスは嫌そうに顔を歪める。

「でも、頑張る!私、お母さんだもん!」

○○はにっこり笑う。

「だな!じゃあ、お父さんも頑張らなきゃな!」

シャンクスもにかりと笑った。





産まれてくる君のためにも



また、部屋を片付けて……







片付く部屋






(完)



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