片付く部屋6
「□□さーん!3番テーブル!!」
「あ、はーい!」
片付く部屋6
あれから半年。
○○は旧姓で働いていた。
元々○○をシャンクスの苗字で呼ぶ人もいなかった為、特に違和感もない。
この半年で髪をバッサリと切り、服装もジーパン中心だ。
昼間はスーパーでパートタイマーとして働き、夜はこの居酒屋で働いていた。
結婚してから働く事が無かったので、忙しいが充実した毎日を送っていた。
最近、赤髪の会社の名前を良くニュースで耳にする。
この半年で、また成長し、株なども鰻登りのようだ。
(半年って、どれだけ私がストレスだったのよ)
はぁと小さくため息をつく。
それではいけないと頭を左右に振って思いを断ち切る。
「失礼します」
個室のドアを叩いてから開けた。
「注文お願いします!」
「はい!どうぞ」
「えーっと、生2つと、今日のお勧めプレート!」
「はい!かしこまりました」
○○はピッピッと手に収まる機械を操る。
「他にご注文はありますか?」
○○がパッと顔をあげて驚く。
そこにいたのは美しい女性と並んで座っている赤い髪の男。
見間違える筈もない、シャンクスだった。
「なんかある?」
女性はシャンクスを振り返る。
「……いや」
シャンクスは○○に気付かない様にこちらを見ようともしない。
「大丈夫でーす!」
「かしこまりました。お待ちください」
○○は個室を後にした。
「はぁ……」
休憩室で大きくため息をつく。
ここは全室半個室の居酒屋だが、値段も良心的。
こんな若い子向けな場所には来ないだろうとたかをくくっていた。
「……何でいるのよ」
○○はパンッと頬を両手で叩く。
「もう、関係無い!私の声にも分からなかったしね!」
○○は笑った。
「□□さーん!3番テーブル!!」
「……はーい」
休憩室で30分いたので、もう客も変わったかもしれないなどと、楽観的に3番テーブルに行く。
「失礼しまーす」
中には女性の姿はなく、シャンクスがゆっくりと振り返る。
「ご注文は?」
○○は営業スマイルを出す。
「………………話がしたい」
シャンクスは○○をじっと真正面から見た。
「……彼女は?」
「帰った」
「ふぅん?良いけど。あ、なんか手続き他にあった?」
年金とか……。
○○は電話も変え、もちろん新しい住所なども教えていない。
「……何時に終わる?」
「え?えーっと、今日は23時まで」
「……そんな遅くまで」
シャンクスは静かに声を出す。
「あはは!大丈夫だよ!この辺明るいし!心配する人もいないしね!」
○○はケラケラと笑った。
「……待ってる」
シャンクスは眉間にシワを寄せ、そう言った。
「わかった。注文は?」
「……烏龍茶」
「?かしこまりました」
ソフトドリンク?と思いながらも頷いて、部屋を離れた。