片付く部屋5
※一応注意
18才未満の方には相応しくない表現が混ざります。苦手な方は回れ右。
それ意外の方はどうぞ!
「よし!後一箱くらいかな!」
すっかり片付いてきた部屋に○○は力を入れた。
「……ここも、一人の時間が長かったからなぁ」
○○は見違えてしまった部屋を眺める。
「さぁ!頑張ろう!」
頭を左右に振って、自分を奮い立たせる。
片付く部屋5
結婚して2年。
それなりに充実した時間が流れていた。
シャンクスも忙しいなりに、○○を気遣い、休みの日には色々な所へと連れ出してくれた。
優しい微笑みに○○は幸せを感じていた。
「んっ、あ、あの」
「ん?」
事情の最中の熱の籠った目で見下ろされるのが好きだった。
赤い髪が揺れ、間違いなく彼は彼女の事だけを考えているのが分かるからだ。
「シャンクス、ん、忙しい、でしょ?」
「……悪いな。なかなか一緒にいてやれなくて」
シャンクスは深く息を吐き、動きを止める。
「ううん、まぁ、寂しいのは事実だけど」
「……」
「あ!あのね?だから、そろそろ子供が欲しいかなぁ……なんて……」
○○は思いきって声に出す。
「……」
シャンクスお得意の難しい顔をする。
「ごめ」
「いや。ただ、あまり帰れないのに妊婦のお前を一人にしたくなくてさ。心配だろ?俺のいない間に何かあったら」
シャンクスは難しい顔のまま声を出す。
「え?」
「だから、もう少し仕事に余裕が出るまで待ってくれないか?」
シャンクスの真剣な顔に見下ろされ、高鳴る鼓動。
「……しゃ、シャンクスにそう言って貰えるなんて思わなかった」
○○は驚いてシャンクスを見上げる。
「……何だよ、それ」
シャンクスは眉間にシワを寄せる。
「え、ううん。ありがとう。ちゃんと考えてくれて」
○○は嬉しそうに笑った。
「あァ」
シャンクスは笑い、○○の足を持ち上げると動きを再開させた。
その後、シャンクスが避妊具を外して行為をする事は無かった。
そして、数日前。
ーープルルルル
家の固定電話が着信を知らせた。
「はーい!もしもし」
ガチャリと受話器をあげる。
『……○○さん?』
くぐもった女の声が受話器の向こうから聞こえて来た。
「……そうですけど。あなたは?」
○○は不思議そうに声を出す。
『お話ししたい事があるんです。とても、大切な……』
女は切羽詰まった声を出す。
「へ?」
『あの、角の喫茶店にいます』
ーーぷっプープー
「…………何かしら」
○○は不信に思いながらも出掛ける準備をする。
「○○さん、こちらです」
女は○○が店に入ると、立ち上がって呼ぶ。
やはり、知らない女だ。
「お待たせしました」
「いえ、お呼び立てして申し訳ありません」
女はハンカチを片手にオレンジジュースを飲んだ。
「…………あの」
女はそっとテーブルに文庫本サイズの本を置く。
「っ!!………………これは?」
○○はなるべく冷静でいようと決めた。
みっともなく声をあげないように。
「…………私と彼のシャンクスの子供がここにいるの」
女は愛しそうに腹をさする。
そう、女が取り出したのは病院で胎児が確認されないと発行されない母子手帳。
「……」
○○がショックを受けているのに、他人事の様な気がした。
ーーそう言えば、シャンクスが最後に家に帰ってきたの、いつだったっけ?
○○はボーッと考える。
「私にも、この子にも父親が必要なの。お願いします」
ーー私との子は要らないのに……。
あぁ、やっぱり、この恋は初めから終わっていたんだ。
女の話が耳に入らず、○○は一言「分かりました」と言った気がした。
それすら、他人事の様に思えた。
○○はすっかり片付いた部屋をぐるりと見回した。
もう、○○の気配などない。
アルバムや、写真などはまとめてごみ袋へ入れた。
「ごみの日じゃないし。これくらい捨てて貰おう」
○○は部屋の隅にごみ袋を置いた。
ーーピンポーン
「はーい!」
「ちわーす!引っ越し屋でーす!」
タイミング良く引っ越し業者が来た。
「お願いします」
○○は笑顔でまとめた荷物を運んでもらう。
すっかり無くなった部屋のテーブルの上に自分の分を記入した離婚届。その上に結婚指輪と初めて貰ったブローチを置いた。
ーーピリリリ
携帯が鳴る。
「もしもし」
『もしもし、○○か』
それはシャンクスの声だった。
「うん」
『悪いな。今日も帰れない』
シャンクスの声が鼓膜を震えさせる。
「大事な話があったの」
『……悪い』
「ううん。もう、いつでも良いよ。帰って来たらテーブルの上、見てね」
『分かった』
「じゃあ、お仕事頑張って」
『あァ』
「じゃあ、バイバイ」
『あァ』
「さよなら、シャンクス」
ーーぷっプープー
電話を切り、部屋を出る。
鍵をかけ、鍵はそのままポストに入れる。
「今までありがとう」
○○は二度と振り向かず、立ち去った。