片付く部屋4


「よし!次はここ!」

○○は次の箱を満たしていく。

「この日が私にとって一番幸せな1日だったなぁ」

○○は結婚式のアルバムを見る。

真っ白なウェディングドレスを着て笑う自分と、幸せそうに見える彼の顔。

「この時貴方は本当に嬉しかったの?」

○○は幸せそうに笑うシャンクスを指で弾いた。





片付く部屋4





『ごめん。急用が出来て行けなくなった』

デートの待ち合わせをしていたカフェでシャンクスからの電話を受けた。

付き合って1年の頃だ。

「はぁ……」

ドタキャンには慣れたがやはり心は納得などしない。

○○は仕方なく、一人で映画を見る事にした。





「うん!面白かった!」

なかなか期待通り映画は楽しく、気分も上がった。

るんるんとショッピングでもしようと街を歩く。

「……あ、れ?」

○○がハタッと動きを止める。
そこにいたのは、見間違える筈もない、シャンクスの赤い髪。

しかし、隣には美しい女がシャンクスの腕に絡み付いていた。

「っ!!!」

○○は自分が情けなく思えた。
結局シャンクスの心は手になど入ってなかったのだ。

○○は走って自分のアパートに飛び込んだ。

「っふっ!うわ、うわぁあぁぁぁぁ!!!」

○○は子供の様に声をあげて泣いた。



幸せそうだった。

自分といる時は良く難しい顔をするシャンクス。

そんな顔はせずに、自然な笑みをたたえていた。


辛く、苦しく、泣き叫んだ。






夜中、泣き張らした目を氷で冷やす。
頭がガンガンとした。


好きになったのも、自分。

いつも好きと言うのも、自分。

キスをするのも、セックスに誘うのも、自分。

あぁ、分かりきっていた事なのに。

怖いから目を背けた。

辛いから耳を塞いだ。


「もう、止めよう。辛いだけだよ。この恋は」

○○は携帯からシャンクスのアドレスを消した。



いつも連絡を取っていたのは○○であった。

シャンクスからはいつも断りの電話だけ。

なので、こちらから連絡をしない限り、向こうからは来ない。

それでも少し期待していた。



だが、2ヶ月連絡は無かった。







「立食パーティ?」

○○は不思議そうに社内メールを見ながら声を出した。

「えぇ、社長や、幹部なんかも来て、やるんですって」

同僚がそれに答えた。

正直、シャンクスの姿を見るのも辛いが、周りが2人が付き合っていた事を知らないので、まぁ良いかと出席をする事にした。






「うん!美味しい!さすが高級ホテル!!」

まだまだ下っ端の○○は社長や幹部から遠く離れた場所にいた。
高級ホテルのホールを貸し切り、立食パーティは和やかに進んだ。

「あ!ねぇ、社長空いてるよ!行かない?」

同僚が嬉しそうにシャンクスを指差す。

「私良いや!行ってきな!」

○○はサンドウィッチを手に取る。

「そう?行ってくるね!!」

女子社員達は代わる代わるシャンクスや幹部(特にベックマン)に酒をついだ。

(あーあ、知らないよ、酔い潰れても)

○○はそうちらりとシャンクスを見た。

(……もう、関係無いのにね)

○○は自傷気味に笑う。






「うーん。いつ抜けよう」

○○はホールから出て、トイレを済ませてうろうろとしていた。

意外に盛り上がるパーティは、抜け出すのが困難な様に思えた。

「○○……」

「っ!!あ、社長」

名前を呼ばれ振り返ると、そこにはシャンクスがいた。
やはり、トイレの帰りらしい。

「○○」

「社長!ほら!早く戻って!主役が抜けたら怪しまれるよ」

○○はシャンクスと目を合わせずに苦笑する。

「○○」

「社長が行かないなら良いか。私は先に戻ります」

「○○!!」

シャンクスの苛立った声がした。

「な、なんですか?」

○○は怒鳴るように名を呼ばれ恐々振り返る。

「何で、連絡くれないんだよ」

シャンクスの声が弱々しかった。

「……もう、私はいらないでしょ?」

「誰がそんな事!!」

「だって!」

○○は涙を堪える。

「だって、社長にはもう新しい彼女がいるじゃない」

○○は小さく声を出す。

「トイレこっちかな?」

「あ!あれじゃん!」

女子社員が近付いてくる気配を感じて、シャンクスが無言で○○の手を取る。


ーーパタン


幹部達の準備室に用意した個室へ入る。
カチャリと音を立てて鍵がかけられた。

「で?」

シャンクスは声を出す。

「……あの、最後に断られた日。見たの。綺麗な女の人と幸せそうに笑う貴方を」

○○は声を絞り出す様に言う。

「……そうか」

シャンクスはチッと舌打ちをして頭をガシガシとかいた。

「……それに」

「ん?」

「別に自分から連絡しても良いんじゃない?」

○○は小さく言う。

「……」

「わ、私。もう、シャンクスとは付き合えないよ」

○○は震える声を出す。
泣くのを必死で我慢しているのだ。

「……」

「い、今まではありがとう。楽しかった」

「……」

「っ!!」

シャンクスは○○が背を向けると静かに後ろから○○を抱き締める。

「許してくれ」

「……」

「なァ、お前を手放したくねェよ」

「…………なら」

「ん?」

「結婚……して?」

「……」

○○の言葉にシャンクスが驚いて、そしてお決まりの難しい顔をする。

「……」

「……分かった。しよう」

シャンクスは真剣に頷いた。

「ほ、本当?」

○○は驚いてシャンクスを見上げる。

「あァ、男に二言はねェ」

シャンクスはにかりと笑った。

「うん!」

○○は嬉しそうに頷いた。





こうして、2人は1年後結婚式をあげた。

会社はシャンクスの意向で寿退社をした。





幸せを感じながら2人は結婚をした。



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