02
おかしい。
「なァ、ユニ見なかったか?」
「は?ユニ?そう言や最近見てないな」
「そうか」
いない。
「おい、ユニ見なかったか?」
「ユニなら隊長の方が詳しいでしょ!」
「………………そうか」
どこにもいねェ。
この前、島を出てからくらいか?
ユニの姿が見えねェ。
誰に聞いても「見てない」の一点張り。
おかしい。
さすがに、これは、おかしい。
俺はこのバカでかい船の中を走り回った。
「オヤジ!!!」
ドアが壊れるほどの衝撃と共に俺はオヤジの部屋に入る。
「グララララ!何だ?騒々しい!!」
オヤジは豪快に笑い飛ばした。
「ユニがいないんだよ!!どこにも!!知らねェか?!」
俺は自分で思ってる以上に焦っているらしい。
「…………あいつは船を降りた」
「は?」
オヤジの言葉に頭が真っ白になる。
言ってる意味が解らねェ。
「な、なんでユニがこの船を降りる必要があるだよ?!」
俺は気付いたらオヤジに飛び掛かり、オヤジの胸ぐらを掴んでいた。
「ガキが出来たんだと」
「は?」
「腹の中にな」
オヤジの言葉に俺はガツンと殴られた様だ。
「だ、誰の?」
「オメェ、それユニへ対する侮辱か?」
オヤジの目がギラリと光った。
「お、俺の!?」
「他にいるのか?」
「…………あ、あいつが俺以外の男がいないのは、一番よく知ってる」
俺は小さくなる声に自分で驚く。
「で、でも何で船を降りるんだ?!」
俺は訳が解らずにオヤジに怒鳴る。
「…………テメェの胸に手ェ当てて考えやがれ」
オヤジの怒気を孕んだ物言いに押されながら、俺は必死に考える。
「…………前に」
「あん?」
「ユニが「子供とか欲しくないの?」って」
俺は思い当たる事を呟く。
「…………で?オメェは何て言ったんだ?」
「…………ガキなんて邪魔なだけだろ?って」
自分の言葉に呆然とした。
「……。その顔なら解ってんな」
オヤジの声にぐらりと目が回る。
「だって、俺の子だぜ?俺の子って事は……」
「そんな事関係ねェだろう?」
オヤジの顔がニヤリと笑った。
「あいつは他でもねェ。お前のガキだから産みたいんだとよ。例えお前と離れても、な」
オヤジの声に俺はすでに走り出していた。
あァ、早くお前の顔が見てェ!ユニ!!
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