01
ーー私は運がなかったのだ。
マユはグランドラインのとある島でウェイトレスのバイトをして日々を過ごす平凡な女性だ。
平凡と言っても彼女は身体能力もそれなりに高く、頭の回転をまあまあ速い為、海軍に在籍していた。
しかし、無いのは度胸と覚悟だったらしい。
いや、本人はあると思っていたのだが、初めてグランドラインに入って出会った海賊が悪かった。
彼の名は白髭海賊団1番隊隊長不死鳥マルコ。
かの四皇白髭の事実上ナンバー2の男だ。
その時のマユの上司もまた無茶な男で「不死鳥マルコだ!捕まえろ!!」と躍起になったのだ。
相手はたった一人の海賊。
しかし、勝負はあっという間に着いた。
そのたった一人の海賊が海軍の軍艦を一隻相手にあっさりと勝ってしまったのだ。
マユは次々倒れる同胞に恐怖を感じていた。
既に戦う気力などなく、かと言って逃げる元気も無かった。
銃を構える事も出来ずにただ呆然とマルコを見ていた。
「お前も海兵かい?」
「っ!!」
マルコがマユに気付き近付いた。
「はっ、声もでないのかよい」
侮蔑の色を宿した目に見下ろされ、マユは思わず銃を持ち上げる。
「やる気あるのかい?」
ニヤリと笑ってマルコは銃口を自分の額に向けさせる。
「ほれ、弾くだけだ」
「っ!!?」
あまりの事にマユの手がカタカタと震える。
「はっ、それでもグランドラインにいる海兵か」
興味を無くしたマルコは立ち上がりマユに背中を向ける。
「あっ!待て!」
マユは言いながら引き金を弾く。
ーーパーンッ
乾いた爆音と共にマルコの後頭部に銃弾が撃ち込まれる。
赤い血が弾け飛ぶと思いきや、彼の体が青い炎に包まれる。
「え?」
マユは思わずその美しい炎に目を奪われた。
くるりと踵を返しマユに近付くとマルコは銃を蹴り飛ばした。
「っつ!!」
「なかなか見込みがあるねい」
マルコはニヤリと笑いながらマユを見下ろした。
「海軍なんて辞めちまえ。お前には似合わねェよい」
マルコはそう言うと再び背を向けて去っていった。
マユは壊滅した軍艦で何とか近くの島まで行き、恐怖を理由に海軍を辞めた。
今でもあの時見た青い炎の美しさを忘れる事が出来ずにいた。
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