01

「ねぇ、シャンクス」

「ん?」

「山口と言えば?!」

「あ?百恵?」









サヤカは昨日の会話を思い出してそっとため息をついた。

最近付き合い出した彼、シャンクスはサヤカより10才年上だ。
経験豊富で冗談も上手く、話題に事欠かない。

一緒にいても楽しい。

しかし、時々ネタがわからないのだ。
せっかく面白い事を言っているのだろうに、意味がわからないとなんとも言えないのだ。


もちろんそれだけではない。

サヤカはまだ大学を出たてのペーペーだが、シャンクスは世界でも4本の指に入る会社を経営しているのだ。

おまけに、寛容で寛大。
少しの事なら笑って許せるほどの心の広さまで持ち合わせた、シャンクスとはそんな男である。

対してサヤカは平々凡々の一般人。
よく、恋人になれたなと自分で思うほどなのだ。


恋人として対等でいたいと思えば思うほど、彼の偉大さが嫌でも目についてしまう。






「……はぁ」

サヤカはまた少しため息をついた。

今日は特に予定もなく、仕事も早く終わった。

「とと、いけない!せっかく仕事も早く終わったんだから、のんびりお買い物でもして帰ろう!」

街は少し早いクリスマスに浮かれていた。

「今年は一人じゃないクリスマスだもん!プレゼントとかも考えなきゃね」

サヤカは手芸屋に入り、少し高めの毛糸を買う。

「これならきっと大人の人が着けても良いよね」

サヤカは少し良くなった気分をさらに盛り上げようと街中を歩く。

「やっぱりクリスマスって良いよね。可愛いし、綺麗だし、楽しいし!」

サヤカはるんるんと歩く。

「…………今なら電話して平気かな?」

サヤカは急に声が聞きたくなり、携帯を取り出す。

少し迷いながらもシャンクスの名前を画面に出すと、そのまま通話ボタンを押す。


ーープルルルルプルルルル


『もしもし』

「もしもし?今平気?」

電話に出たシャンクスの声に高鳴る胸。

『おー、どうした?サヤカ』

シャンクスは嬉しそうに声を出す。
その声にサヤカはホッとする。

「あのさ、来月のにじゅ」

『あ、おい!』

サヤカが話始めるとシャンクスの怒った声が遠くなる。

『サヤカか?』

「っ!!べ、ベックマンさん!!こ、こんばんは!」

声が変わり、ベックマンの声がが電話の向こうから聞こえてきた。

ベックマンは低い声と強面の顔でサヤカは少し苦手であった。

『来月?クリスマスにお頭と会いたいか?』

ベックマンがそう聞いてきた。

「え?は、はい!もちろん!」

サヤカは勢い込んで頷いた。

『なら、その日まで大人しくしていろ。お頭の仕事が進まなかったら年末、いや年始まで休みは無いぞ?』

『は?ふざけるなよ!』

『あんたは黙ってろ』

電話の向こうで言い争う二人。

「……お忙しいんですか?」

サヤカは恐る恐る声を出す。

『あァ、お嬢さんのお遊びに付き合ってる暇がないくらいな』

「っ!!」

笑いながら言うベックマンは冗談混じりだが、サヤカは言葉通り受け取った。

『お前!』

「解りました。シャンクスにはクリスマス楽しみにしてるので、頑張ってと伝えておいてください」

お願いいたします。と言ってるサヤカは静かに電話を切った。

「はぁ……」

サヤカはまた落ち込んでしまった心のままで空を見上げた。



残念ながら、明るい街の中では星空を見る事が出来なかった。

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