03

次の日の朝。


カナが学校へと着くと出迎えたのはエースだった。

「おはよ、カナ!」

エースは爽やかににかりと笑った。

「おはよう、ポートガス君!」

カナも笑顔で答える。

「なァ、これ知ってるか?」

エースがおもむろに取り出したのは小さなチョコレートが入った箱。

「え?ううん。知らない」

「だろ?これさ、新作なんだよ!ほら、あそこの角の店の」

エースがそちらの方を指で指す。

「え?あ!超人気店の?!」

「そう」

驚くカナにエースが頷く。

「弟がそこの飯が旨いって昨日一緒に行ったんだよ。そしたらさ、そこの息子がルフィと同じクラスの野郎で。そいつが作ったんだと」

エースが楽しそうに説明をする。

確かバラティエとか言うレストランで、テレビや雑誌にも紹介されている。

「へぇ!ポートガス君の弟君は良いお友達がいるんだね!」

カナは少し羨ましそうに言う。

「で、だ。これ、やる」

エースが小さな箱からいかにも高そうにラッピングされたチョコレートをひとつ摘まむ。

「へ?い、良いの?」

カナは驚いてエースを見上げる。

「こっち来い」

歩いていた廊下を曲がり、人気の無い空き教室へ入る2人。

「わざわざここに……」

何故空き教室に入ったのか解らずにキョトンとエースを見上げる。
扉を閉めれば2人きりの空間が出来た。

「これしか無いんだ。他の奴にやるチョコなんてないならな」

エースがにやりと笑う。

その少し黒い笑顔にカナはドキリとする。

「ほれ、あーん」

エースがチョコを持ったままカナの口許にチョコを近付ける。

「え?いや、それは」

さすがに恥ずかしいとカナは身を引く。

「何言ってんだよ。チョコ溶けてきたぞ?」

エースがグイッと間合いをつめる。

逃げると教室の壁に背中がぶつかった。

「うぅ……」

「ほら、口開けろ」

追い詰めるエース。

「弟にもよくやる」

エースのその言葉に仕方ない、変な事で照れているのは自分だけだと言い聞かし、カナは口を開けた。

「っ!美味しい!」

エースの指に触れない様にチョコだけを口で受け取ると、上品な甘さが口の中に広がった。

「だろ?」

エースはにかりと笑った。

「あの、」

まだ壁に追いやられているカナは早く離れてくれとエースを見上げる。

「あー、カナが早く食ってくれねェからチョコ溶けたな」

エースは自分の指に付いたチョコを眺める。

「舐めろよ」

エースがカナの口許に自分の指を持っていく。

「っ!!!」

カナはあまりのエースの艶っぽい仕種にカーッと頬を赤く染める。

「ほら」

エースのチョコの付いた指がそっとカナの唇をなぞる。

「……これでさ、キスとかしたらチョコの味だな」

これはいけないと逃げようとした瞬間、エースの腕が腰に巻き付き、強く引き寄せられる。

「逃げんなよ」

エースの熱の籠った目に見られながらカナは…………。




ーーガラッ




「エース、朝から盛ってるない!!!」

勢いよく扉が開き、数学担当で隣のクラス担任のマルコが顔を出した。

「っにすんだよ!マルコ!!」

エースが眉間にシワを寄せてマルコに怒鳴る。

「せっせせせせせせ先生!!おは、おおおはようございますぅ!!!!」

カナはエースの手が緩んだ瞬間、マルコに向かって駆け出し、扉を抜けて走り去った。

「チッ!良いとこだったのによ」

エースが不貞腐れた様に自分の指に付いたチョコを舐めた。

「お前な……。学校に必要の無い物は没収だよい!」

マルコはエースからチョコを取り上げる。

「あ!おい!」

「放課後取りに来いよい」

マルコはスタスタと出ていった。



その後、もちろんエースを避けまくるカナ。

放課後バックレ様としたエースはマルコにこっぴどく説教をされた。





エース、失敗。

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