01

中間テストも終わり、日常が帰って来た。

数日後にはテストが返され一喜一憂する生徒たち。

それでもテストから解放され、部活に明け暮れる者やバイトをする者、日々をぼんやり過ごす者と様々な放課後がそれぞれで繰り広げられていた。



そしてここ、可愛らしいケーキ屋さんのイートインコーナーにも4人の少年少女がひとつのテーブルを囲っていた。

「ったく、また一番点数低かったか!」

答案用紙を見比べてエースが悔しそうに声を出す。

「チッ。糞ファルガーがムカつくな」

キッドがローの回答用紙を見る。

「いや、この問題は難しかった。なぁ、カナ?」

にやりとローが笑う。
ローの回答用紙は完璧であったが、最後の問題だけ空白。
まるで“わざと”答えを書かなかった様だ。

「…………トラファルガー君、前にこの問題解いてたよね?」

カナが緊張しながらも困った顔でローを見る。

「忘れたな」

ローはさらりと言うと珈琲を飲む。



前回の小テストに引き続き、中間テストの数学の試験でまた競い合っていた3人に、学年1数学の点数が高かったカナが再び拉致されて来たのだ。



キッドとエースは違うが、ローはカナを1位にする為にわざと手を抜いた様だ。

なら、カナも悪い点を採れば良い話だが、それが出来ない事情がある。

それは、彼女が数学で点数を稼がなければ評定平均がぐんと下がるからだ。



「しっかし、あのマルコから良く満点取れたな!」

エースがカナの回答用紙を見る。
全てに丸印が付いていて100の文字。

「本当だな。あの、変態ドS」

キッドも頷きながら言う。

「へん……ド、ドSなの?」

カナが恐る恐る聞く。

「妙な引っかけも多いからな。ドSなら俺も負けないぜ?」

ローがにやりと笑う。

「い、いらない!…………ひっかけ?」

カナは首を左右に振ってから、不思議そうに聞く。

「ここと、ここと……」

「ここもだな」

「後ここ」

エース、キッド、ローの順に問題を指差して行く。

「…………気付かなかった」

カナは回答用紙をまじまじと見る。

「気付かないとか、スゲーな」

エースが変なモノを見る目をする。

「数学に関してだけ天才だな」

キッドが呆れた様に言う。

「そんな所も気に入ってるひとつだな」

ローがにやりと笑う。

「………………どうせ、馬鹿ですよ」

カナはプイッと横を向き、オレンジジュースを飲む。

(((可愛い……)))

3人は同じ事を心の中で思った。


「あ!もうこんな時間!」

カナは慌てて席を立ち上がる。

「あ?もう帰るのか?」

エースがつまらなそうにストローをかじる。

「え?うん。今日は早く帰って来いってお母さんに言われてるの」

カナは鞄を持つ。

「送ってくか?」

キッドがバイクの鍵をカチャリと回す。

「ううん!大丈夫、ありがとう」

カナはにこりとキッドを断る。

「気を付けて帰れよ」

ローは軽く手を上げる。

「ありがとう!ご馳走さまです!」

カナが深々と頭を下げると3人もつられて頭を下げる。

「また学校で!」

にっこりと手を振って立ち去るカナの背を3人はじっと見送る。

「やっぱ良いな」

エースが肘をテーブルに立て頭を手のひらに乗せる。

「最初はおどおどとしてた癖にな」

キッドがにやりと笑う。

「お前らにカナは勿体ねェな」

ローが珈琲を飲み干す。

「何だそれ?ってか、お前らもカナが好きなのか?」

エースが顔をしかめて聞く。

「…………」

キッドが押し黙る。

「俺はああ言う女好きだな」

ローがにやりと笑う。

「やっぱりローもか」

エースが嫌そうに声を出す。

「まァ、ユースタス屋が違うのは救いか?」

「俺は何も言ってねェ!!」

ローの言葉にキッドが噛みつく。

「お前もなのか?キッド」

エースがじっとキッドを見る。

「……関係ねェ」

「それは違うぞユースタス屋」

「あァ!?」

「俺達皆同じ女が好きなら協定を立てよう」

「「協定?」」

ローの言葉に2人が声を揃えて返す。

「あァ。俺達3人がいがみ合っても仕方がねェ。なら、3人で堂々と口説く。その代わり他の野郎がカナに近付くなら容赦しねェ」

「なるほど!」

「おもしれェな!」

ローの言葉にキッドとエースが頷く。

「口説く順番を決めて、毎日一人ずつってのはどうだ?同時に言っても良いが、3人共振られる可能性もあるからな」

エースが指を立てる。

「なるほどな。カナならやりかねねェな」

ローが頷く。

「よし、ならほれ」

キッドが爪楊枝を3本手に取り先を隠すように握る。

「爪楊枝の先を2本長さを変えて折った。長さが短かったやつから順番ってどうだ?」

キッドがにやりと提案する。

「それだとキッドが解るじゃねェか!!」

エースが不公平だと声を出す。

「なら、俺は残ったので良い。順番なんて、在って無い様なもんたしな」

キッドがにやりと笑った。

「……なら、良いだろう」

ローが頷く。

「よし!面白くなりそうだな!」

エースが舌でぺろりと唇を舐める。

「ほんじゃま、恨みっこ無しで!」

エースがにやりと爪楊枝を持つ。

「まァ、良いだろう」

ローもエースとは違う爪楊枝を持つ。


「「「せーの!!!」」」

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