再会
「ちょっと、おトイレ行ってくるね」
○○は席を立つ。
「あーん、どうしたらカミューさんに会えるのかなぁ?」
ナナミは頭を抱え込んだ。
「うーん、あの調子だと本当に明日ここ出ちゃいそうだよね」
U主も頭を抱える。
「……ねぇ、そのカミューさんって、確か赤騎士団長の人だよね?」
ジョウイが確認する。
「そうそう!すっごくカッコイイ人だよ!」
ナナミが声高く言う。
「あれ……」
ジョウイが指を指す方をナナミとU主が見る。
「「ん?あーーーー!!!!」」
ナナミと○○は同時に叫んだ。
「お久しぶりです、U主様、アシタノ城から出て以来ですね。……ナナミ殿!生きていらしたのですね」
カミューが上品な笑顔で挨拶をする。
「か、カミューさん!どうして?」
驚きのあまりU主は大きな声を出した。
「ミューズ方面からU主様に良く似た少年達を通したと関所から連絡を受けまして」
カミューはにこりと笑った。
「そちらはジョウイ殿ですね」
カミューはジョウイに向き直る。
「は、はい」
ジョウイは緊張した面持ちでカミューと対面する。
「そう、かしこまらず。まぁ、同盟軍で一番戦力があるロックアックスにいるとは誰も思わないとは思いますが、お気を付けください」
カミューは紳士的な態度でジョウイに接する。
「それで、この様な危険をおかしてまで何故ここに?」
カミューは不思議そうにU主を見た。
「ナナミちゃん!ここソーダ水が売ってたよ!」
その声にカミューがピクリと反応する。
「と、言う訳で来ました」
U主の言葉にカミューはゆっくりと振り返る。
「……」
「……」
「……」
「……」
カミューと○○はお互いに見つめ合ったまま立ち尽くした。
「あ……あー、カミューさん、お久しぶりです。そ、そのー……元気……でしたか?」
何か言わないとと、○○が慌てて口を開いた。
「……」
それでもカミューはじっと○○を見ているだけ。
「あー…………あ!ナナミちゃん、はい、ソーダ水」
「あ、ありがとう」
気まずくなった○○がナナミに持っていたソーダ水を渡した。
「っ!」
その手をカミューがガシッと掴む。
「まことに申し訳無いのですが、私急用が出来てしまいましたので、退散しても宜しいでしょうか?」
カミューは○○の手を掴んだままU主に向き直る。
「あ、はい。勿論です」
U主はカミューの迫力にビクビクとしながら頷いた。
「宜しければ城にもお寄りください。マイクロトフが喜びます」
カミューはそう付け加える。
「それでは失礼いたします」
カミューは優雅な動作で礼をすると、○○を連れて立ち去った。
「行っちゃったね……」
ジョウイがぽつりと呟いた。
「○○さん大丈夫かな?」
ナナミは少し心配そうにレストランの出入り口を見る。
「……たぶん」
U主も不安そうに頷いた。
レストランを出るとカミューは城とは反対方向へ向かう。
「あ、あの」
○○が口を開くがカミューはこちらを見ようともしない。仕方なく○○はただカミューに引かれるままに着いていく。
カミューは無言のまま長い足を動かしている。それに必死の小走りで○○が着いていく。
ロックアックスの街の人々は珍しげに2人の様子を見ていた。
(め、目立ってる)
○○は困った様にうつ向いた。
カミューはロックアックスの入り口近くの宿屋に入る。
「これはカミュー様、いらっしゃいませ」
宿屋の主人は丁寧にもてなした。
「すまないが、人払いが出来ている部屋を貸してほしいのだが」
カミューは慣れた様に言う。
「それでしたら、最上階をお使いください。泊まる予定のお客様はいらっしゃいませんので」
「助かる」
宿屋の主人はにこりと笑った。
「係りの者に案内させましょう」
「いや、何度か入っているから大丈夫だ」
主人の申し出をカミューは断った。
「承知いたしました。こちらが鍵でございます。火は消えておりますのでお気をつけください。何かありましたら、ご遠慮なくお申し付けください」
宿屋の主人は丁寧にお辞儀をした。
カミューは鍵を受けとると、慣れた足取りで宿屋の階段を進む。
何段か登ると、一際豪奢な扉があった。
カミューは鍵でその扉を開ける。中は真っ暗だが、まだ階段が続いている様だ。
カミューは内側から鍵を締める。
「足元に気を付けてください」
カミューはチラリと○○の方を見た。
「っ!はい!」
○○はカミューに話しかけられた、それだけで嬉しそうに頷いた。
カミューは右手に宿る烈火の紋章を自在に使い、火を起こす。
その光を頼りに階段を登りきると、また扉があった。
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