終結
程なくして、U主率いる同盟軍がハイランド首都ルルノイエへ進撃。
見事勝利をおさめ、長い戦いが終結した。
そして、月日は流れた。
キャロのゲンカクの道場では、2人の人間が仲の良い姉妹の様に暮らしていた。
「ナナミちゃん!買い物行ってくるから、庭のお掃除お願いね!」
「はーい!」
○○の言葉にナナミは素直に返事をした。
「あーんもう!雑草ってすぐに生えてくる!」
ナナミは悪態をつきながらもせっせと掃除に励んだ。
そして、ゲンカクの墓も綺麗に掃除をする。
「ふー!綺麗になった!」
ナナミは満足そうに頷いた。
「ゲンカクじいちゃん!U主とジョウイを守ってね」
ナナミは熱心に墓にお祈りをする。
「ナナミ!」
玄関から聞こえてきた声にナナミはビクリと肩を揺らす。
「ナナミ!ただいま!!」
入って来たのは、そう、同盟軍リーダーにして、ナナミの弟U主だ。
「お、お帰りなさい!!」
ナナミはU主に抱き付き、そして涙を流した。
「ナナミ……生きてたんだね」
○○はにっこりと笑った。
「うん!シュウさんとホウアン先生のお陰なの!」
ナナミは泣きながら説明をする。
「そうだったんだね、全くシュウめ」
U主は姿の見えない軍師を思った。
「ほら!早く入っておいでよ!」
「???」
U主が玄関に声をかける。ナナミは不思議そうに玄関を見た。
「っ!!!ジョウイぃぃぃ!!!」
「ただいま、ナナミ」
玄関から入って来たのはハイランドのトップにまで登り詰めたジョウイ・ブライトだった。
そして、3人の幼馴染みは久し振りに再会を果たしたのである。
「良かった!本当に良かった!!」
ナナミはえぐえぐと泣きながら2人に抱き付いた。
「ただいまー」
「え?」
玄関から聞こえてきた女性の声にU主は驚いた。
「今日はオムライスにしよう!卵が安か……」
喋りながら入って来たのは○○。
「U主様!」
○○は驚いた様にしてから、にっこりと笑った。
「お帰りなさい」
「っ!た、ただいま!」
U主は照れた様に驚いた。
「では、そちらがジョウイ様ですね?お帰りなさい」
○○はジョウイにもにっこりと笑った。
「……た、ただいま……」
ジョウイは戸惑いながらも返事を返した。
「ジョウイ!紹介するね!こちら○○さん!アシタノ城では色々お世話になったんだよ!」
ナナミは嬉しそうに笑った。
「初めまして、○○と申します」
○○は丁寧に頭を下げた。
「あ、ジョウイです。2人がお世話になりました」
ジョウイも丁寧に頭を下げて挨拶をした。
「まさか、○○さんがナナミといたなんて……!」
U主は驚いた様に言った。
「そうですか?積もる話もあるでしょうから、私が夕飯の準備をしますね」
○○がにっこりと笑った。
「あーん!私も手伝う!」
ナナミがそう言うと
「ナナミちゃんはせっかくだから話してな、ね?」
「な、ナナミ!色々あったんだよ!」
「そ、そうだよ!ナナミ!」
と口々に否定する。
「そう?そうだね!○○さん宜しくね」
ナナミはにっこりと笑った。
「「「ほっ」」」
3人はホッと、胸を撫で下ろす。
「……○○さんも被害を?」
コソコソとU主が耳元で話す。
「に、二回ほど……」
○○は真剣な顔をした。
「……二回……」
ジョウイが申し訳なさそうに眉をひそめる。
「だ、だって、ナナミちゃんの料理、見た目も匂いも最高だから!」
○○は苦笑した。
「もー!みんなでコソコソ何やってるの?」
ナナミの声に3人はビクリと肩を揺らす。
「何でもないよ!」
「そうそう!」
「ほら!行こうよナナミ」
3人は慌てて言った。
夕飯は和やかに行われた。
「お……美味しい」
ジョウイは衝撃を受けた顔をした。
「そう?」
○○は嬉しそうに笑った。
「はい!まさかこんなに美味しい物がこの家で食べられるとは……!!」
ジョウイはパクパクと口に料理を運ぶ。
「良かった!どんどん食べてね」
「はい!」
○○は上機嫌で笑った。
「あ、あの……」
U主が食事の手を止めた。
「ん?何ですか?」
○○が顔をU主に向ける。
「あ、えっと。まず、様付けは止めて貰えますか?」
U主が言う。
「クスクス、わかりました」
○○は笑った。
「あ、と、敬語も……僕らの方が年下ですし、もう軍とか関係ないので」
「うん、わかった、U主くん」
○○はにっこりと笑った。
「あ、後……」
「?」
○○は先を促した。
「あの……これからどうしますか?」
U主はおずおずと声を出す。
「あ、そっか。ナナミちゃんとの生活が自然過ぎたけど、私はよそ者だもんね。じゃあ、明日にでも出て行くわ」
「えー?!何て事言い出すのよU主!!」
ナナミは怒ってテーブルをバンッと叩くと立ち上がった。
「え?違っ!」
U主は慌てて言うが、遅かった。
「酷い!ひどい!ヒドイ!!○○さんは私の為に大切な人と離れてまでー!!」
ナナミはぶんぶんとU主を振る。
「っ!ナナミちゃん……それはもう……」
○○は困った様に顔を沈めた。
「そ、それ、それだよ、ナナミ」
U主が必死に声を出す。
「え?」
ナナミは不思議そうに手を止めた。
「○○さん!」
「はい?」
U主はきりりと○○を見た。
「○○さんはまだカミューさんが好き?」
U主は真剣な顔で聞いた。
「うん、でも……もう」
○○はにっこりと笑った。
「良くないですよ!」
それまで黙っていたジョウイが声を出す。
「好きな人と離れるのは辛いですよ!」
ジョウイが必死に声を出す。
「ジョウイ……」
ナナミがジョウイを見る。
「でも、○○さん、カミューさんは待ってますよ」
U主はそうじっと見た。
「え……」
○○は驚いてU主を見た。
「だって、カミューさん、○○さんがいないって分かった時のめちゃくちゃ凄かったよ!」
U主は力一杯に言った。
「えー?あのカミューさんが?」
ナナミが嬉しそうに聞きたがる。
「うん、マイクロトフさんに押さえられてシュウに掴みかかりそうになってたもん!」
U主が唸った。
「その後も怒り状態で怖かったし……。とても助かったけど」
U主は苦笑した。
「……」
○○は呆然とU主の話を聞いていた。
「行こうよ○○さん!」
ナナミが声を出す。
「え?」
「そうだよ!カミューさん達ならもうロックアックスにいると思うよ」
U主はにこにこと笑う。
「行きましょう。僕たちも一緒に行きますから」
ジョウイもにっこりと笑った。
「…………うん」
○○は小さく頷いた。
「良かった!そうと決まれば明日出発!」
ナナミは元気に叫んだ。
「うん……ありがとう。でも、一人で」
「ダメです!」
○○の言葉にU主が否定する。
「旅の途中で○○さんに何かあったら、僕、カミューさんに何されるか……」
U主は顔を青くした。
「……ま、まさか……」
○○は笑ったが、U主は顔を青くしたままだった。
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