探し物
ナナミの死が伝えられて、アシタノ城でも一夜が明けた。
まだ、U主は倒れたまま目を覚まさないでいた。
「辛いんだろうな」
ビクトールが声を出す。
「あぁ、血が繋がらないとは言え、ただ一人の姉を亡くしたんだ」
フリックも静かに声を出した。
「とにかく、U主様が目を覚まさせ、体調に問題がなければ、ルルノイエに最後の戦いを仕掛ける」
シュウが静かに声を出した。
「いよいよ、ですね」
カミューも静かに声を出した。
「それまでにお前達も体調を整えてくれ」
シュウの言葉に各々退散していく。
明くる日の朝、U主はようやく目を覚ました。
「ん……」
「U主!大丈夫かい?私がわかるかい?」
「あ、いり」
U主はボーッとした頭で声を出した。
「良かった!私、みんなを呼んでくるよ」
アイリは嬉しそうに部屋を後にした。
○○はナナミのいないベッドを見て辛く眉間にシワを寄せた。
しかし、目はしっかりと目的を持つ強い目をしていた。
大広間に皆が集合した。
「今は辛い時でしょうが、叩くなら早い方が良い」
シュウは力強く頷いた。
「そうだね。では、明日にでも出発しよう!」
U主は力強く頷いた。
「では、明日は総力戦になる。各々体調を整えておくように」
シュウの言葉で解散となる。
「時にカミュー」
シュウはカミューに話しかける。
「なんでしょう?」
カミューはシュウを振り返る。
「探し物はないのか?」
シュウはカミューの目を見た。
「?いいえ」
カミューは何を言われたかわからずに否定する。
「そうか。ならばいい」
シュウはそれだけ言うと書類に目を落とした。
カミューは自分の部屋へと足を向けた。
U主の目にリーダーとしての炎が消えていない事にホッとしながら、ルルノイエへの最終決戦にはやはり血が沸き立つ。
「……ふぅ」
カミューは今からこれでは体が持たないと、○○の顔を思い出す。思い出すとそれだけで会いたくなる。
ロックアックスから帰った時の夜に少し話しただけで、会っていない。あの時少し冷たくしてしまった事に後悔しつつ、酒場へと向かった。
「おや、いらっしゃい」
酒場へと着き、レオナに話しかけられる。
「……○○さんは?」
カミューはキョロキョロと店を見渡す。
「……いないよ」
レオナは困った様に笑った。
「いない?」
「あぁ、昨日から見てない」
レオナはキセルをふかした。
「え?」
「無断欠勤なんてする子じゃないんだけどね」
レオナはそう言った。
「お前さん、知らないかい?」
レオナがカミューに聞く。
「……いえ」
カミューは不安を圧し殺した。
「そうかい……どこ、行っちまったのかね?」
レオナはキセルをふかした。
「失礼します」
カミューは足早に酒場を後にした。
カミューは○○の部屋へとやって来た。
ーーコンコン
「○○さん?」
カミューが声をかけるが、返事はない。
ドアノブを握ると回った。
「……入ります」
声をかけてドアノブを回した。
「……」
カミューは愕然とした。
部屋はいつの間には片付けられている。
テーブルの上にはカミュー専用のカップと貰ったはずの巾着が置かれているだけたった。
「……何故これが?」
カミューは慌てて荷物を探るが、身代わり地蔵が出てくるだけで、巾着は無かった。
「……いつの……間に」
カミューは巾着とカップを持ち、一旦自分の部屋にそれらを持って行った。
カミューがどこを探しても○○はいなかった。
「シュウ殿!!」
珍しく取り乱したカミューが大広間に入って来た。
中ではU主とビクトール、フリック、マイクロトフ、アップル、クラウスがいた。
「どうした?慌てて」
シュウは冷静にカミューに問いかけた。
「先程の探し物ですが」
カミューは汗を気にもせずシュウに近寄った。
「見つからないのか?」
「っ!!」
シュウの言葉にカミューは息を飲む。
「カミューどうした?お前らしくないぞ」
マイクロトフが不思議そうに近付いた。
「いないんだ。どこを探しても」
カミューはシュウに詰め寄る。
不穏な雰囲気を察してビクトールとフリックも近付いた。
「シュウ殿はご存知なのですか?彼女、○○さんを」
カミューが声を抑えて聞いた。
「あぁ、知っている」
シュウは何ともない様に言った。
「彼女には、任務に出てもらっている」
シュウはそう言った。
「に、任務?彼女は一般人ですよ?」
カミューはシュウを厳しく見た。
「だが、彼女も同盟軍の一員だ」
シュウはカミューに向き直った。
「……」
「任務の期間は戦争が終わるまで……とも限らん」
「……場所は?」
「お前が知る必要はない」
「っ!!」
「止めろ!カミュー!」
シュウに掴みかかりそうなカミューをマイクロトフが止める。
「そう言えば彼女から手紙を預かっている」
シュウは懐から手紙を取りだし、カミューへ差し出す。
カミューは落ち着いてそれを受け取る。
手紙は短い文だった。
「カミュー様へ
ありがとうございました。
もし、私をまだ思ってくれているのなら、待っていてください。
○○」
「……」
カミューは何度もその手紙を読む。筆跡は間違いなく○○の物だ。
「場所は書いていないのか?」
シュウはカミューを見る。
「……」
「ならば、彼女もお前には言う必要はないと思ったのだろう」
シュウは冷たく言い放った。
「もしくは、お前が彼女の場所など知る必要が無いと、彼女が思ったのか、だ」
「……っ」
カミューはシュウの言葉を聞いて、眉間にシワを寄せた。
「どちらにしろ、彼女の思いを察するしかないだろう。今は戦いに集中しろ」
シュウはカミューにそれだけ言うと興味をなくしたようにみえた。
U主、アップル、クラウスはハラハラと成り行きを見守った。
「まぁ、後1日遅かったらその手紙は捨てる所だった。間に合って良かったな」
シュウはそう言うと大広間を出て行った。
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