そして、いつか
○○は手早く荷物をまとめる。必要最低限の物だけをカバンに詰めると、それを担いだ。
テーブルの上にはカミュー専用のカップと返されたお守りの巾着を並べて置いた。
「……さようなら。楽しかったです」
○○はそう、カップに言うと部屋を出た。
「お待たせしました」
診療所へ着いた○○はにっこりと笑った。
「ううん!早かったね」
ナナミは嬉しそうに笑った。
「じゃあ、行こうか」
「ちょっと待ってね」
ナナミが言うのを○○はせいする。
「あの、ホウアン先生」
「はい?」
○○はホウアンに向いて手紙を差し出す。
「あの、もし……もしもカミューさんが私を探す事があったら、これを、渡して貰えますか?」
○○は辛そうに笑った。
「……必ず……ではなく?」
ホウアンは真剣に聞いた。
「はい、もしもで良いです」
○○が苦笑した。
「では、お預かり……」
「これは私が預かろう」
ホウアンの言葉を遮り、シュウが手紙を受け取る。
「シュウ軍師……」
○○は驚いてシュウを見た。
「お前は任務としてナナミ殿に着いて行くんだ。なら、医者より軍師の方が良いだろう」
シュウはそう言った。
「あ、ありがとうございます。宜しくお願いします」
○○はぺこりと丁寧に頭を下げた。
「うん!じゃあ、行こう!」
ナナミはにっこりと笑った。
「うん!」
「ナナミ殿、クスクスで船を用意してある。これが依頼状だ。……○○、宜しく頼む」
シュウはナナミにではなく○○に渡した。
「あ、はい」
「シュウさんひどい!!」
ナナミはシュウに抗議した。
「じゃあ、お世話になりました」
ナナミはぺこりとお辞儀をした。
「行こう!」
ナナミは診療所の裏口から出て、アシタノ城の外にも誰にも見られずに外へ出た。
「……U主……」
ナナミはアシタノを仰ぎ見た。
「ナナミちゃん……」
「さあ!行こう!○○さんは私が守ってあげるからね!」
ナナミはにっこりと笑った。
「うん、宜しくお願いします!」
○○もにこりと笑った。
2人が城を出た事を知っているのは、軍師、医師、看護婦の3人だけだった。
クスクスには、夜明け前に到着した。
「○○さん大丈夫?」
ナナミは○○を振り返る。
「う、うん!毎朝のトレーニングが無かったら、ダメだった」
○○はそう言って笑った。
「さて、クスクスから船だね」
ナナミは○○の手を引いてまだ眠るクスクスの町を歩く。
○○はただ、一度だけデートをした町を歩く。
ここで告白をして、付き合う事になったのだ。
思い出すだけで、涙腺が緩む。
「○○さん……」
ナナミが気付いて声をかける。
「ううん、ごめんね。行こう」
○○はにこりと笑った。
「あ、この船だね。すみません」
「あー、はいはい」
○○がシュウから預かった依頼状を渡すと、親切に船へとあんないされた。
「風が気持ち良い」
○○は気持ち良さそうに髪をかきあげた。
「……○○さん」
「なに?」
○○はナナミを振り返る。
「カミューさんは良かったの?」
ナナミは心配そうに聞いた。
「……うん」
「ねぇ、○○さん!自分に嘘はダメだよ!嘘は……疲れちゃうよ……」
ナナミは泣きそうな顔になった。
「そう……だね」
○○は苦笑しながら、泣きそうなナナミをそっと抱き締めた。
「私ね、ちゃんとカミューさんとお話しなかったわ。ちょっとそれは後悔」
「じゃあ!」
「でも、今はナナミちゃんと一緒に来て良かったと思ってる」
○○はにこりと笑った。
「そして、いつか……まずは戦争が終わって落ち着いたら、カミューさんに会って話がしたい……かな。どんな話になっても」
○○は強く頷いた。
「……○○さん」
ナナミは○○を見た。
「ねぇ、私キャロって初めて!楽しみね」
○○は楽しそうに笑った。
「うん!とっても良い所だよ!」
ナナミも元気を出そうと笑った。
[ 25/31 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]