悲しい別れ
「カミューさん!」
○○はようやくお目当ての人を探し当てた。
「○○さん!やっと見つけた」
カミューもホッとした様に○○に近付いた。
「あ、あれ?お互いに探しちゃいましたか?」
○○は額の汗を拭いた。
「その様ですね。私にとっても今回は気合いが違いますから」
カミューなにこりと笑った。
「とうとうロックアックスですね。気を付けてください!」
○○はにこりと笑った。
「えぇ、マチルダ騎士団と戦うのは少し思う所も有りますが、我々が正しい正義だと思っていますから」
カミューもにこりと笑った。
「あ、これ」
「これは?」
「お守りです。と、言っても中身は身代わり地蔵です。巾着は一応手作りです」
○○はお守りをカミューへ差し出す。
「これは……わざわざありがとうございます」
カミューは嬉しそうにお守りを受け取った。
「では、御武運を」
○○が手を胸の前で組、祈った。
「はい」
カミューは少し屈むと、○○にキスをした。
ロックアックスを見事制圧した同盟軍だったが、
主君U主の姉、ナナミが倒れたのだ
医務室の前は人だかりが出来ていた。
そして、主治医ホウアンからナナミの死が伝えられた。
アシタノの城は、ロックアックス制圧ムードの中、ナナミの喪にも伏していた。
「これじゃあ、ここも意味ないね。今日は早めに閉めよう」
レオナが辛そうに従業員達に言い、一人で残った。
「……レオナさんも参ってるわね」
「うん……」
「私達も早く帰ろう」
「そうね。お休みなさい」
それぞれ部屋に帰って行く。
「……カミューさん、大丈夫かな……」
○○もナナミの笑顔が見られないのはとても辛かった。
だが、実際に戦闘に参加したカミューの絶望は計りきれない。
○○は迷惑覚悟でカミューの部屋の前に来た。
ーーコンコン
「……はい」
いつもより覇気がないカミューの声が聞こえる。
「あ、の、こんばんは。○○です」
○○が緊張して声を出す。
ーーカチャ
「カミューさん、こんばんは」
○○はなるべく笑顔で挨拶をする。
「○○さん……。こんばんは」
カミューも暗い顔でも笑顔を見せた。
「……あの、これ、作って来ました」
○○はにこりとお弁当を差し出した。
「ありがとうございます……」
カミューは静かに弁当を受け取る。
「すみませんが、今日は……」
カミューは目を伏せた。
「…………分かりました。では、私はこれで」
○○は寂しそうに笑った。
カミューはその笑顔にはっとする。
「○○さん!」
「はい?」
カミューは去る○○に声をかけた。
「ありがとうございます。頂きます」
カミューは弁当を持ち上げた。
「はい!」
○○はそれだけで嬉しそうに笑った。
「きゃっ!」
「ご、ごめんなさ……い」
部屋を出たすぐ角で誰かにぶつかった。
「いえ、あら、貴女は」
この前の女性がにっこりと笑った。
「あ、いえ、すみません」
○○が頭を下げて逃げようとする。
「待って。追い出されちゃったの?」
女性は○○を妖艶な笑みで見た。
「……」
「ごめんなさいね、カミューは今から私と約束があるの」
にっこりと笑った。
「……嘘……」
○○は胸が苦しくなる。
「何でそんな嘘を……?この前も」
○○は辛そうに言葉を発する。
「あら……カミューったら、秘密なのかしら?」
女性は不思議そうに首をかしげる。
「……」
「あ、そうだこれ」
女性はおもむろにある物を取り出した。
「っ!!」
「中身だけいるって、これは貴女に返すわ」
女性が手に持っていたのは○○が作ったお守りの巾着だった。
「……」
○○は巾着を受け取る。
「あら、でも呼ばれているのは本当よ。見てて」
女性はにっこりと笑った。
女性はそのままカミューの部屋の前に行き、ノックをする。カミューが出てくる。
そして、二三言葉を交わすと、カミューは身を引き、女性を部屋に招き入れた。
女性はドアが閉まる直前、にっこりと○○の方を向いた。
そして、ドアは静かに閉まった。
○○はその場から走り出していた。
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