七夕はあなたと
「あ、今日は七夕なんですね」
○○がアシタノ城の酒場で働いている時に、U主がゾロ目の7月7日だと言ったので、そう返した。
「たなばた?たなばたって何?」
ナナミは不思議そうに聞く。
「七夕って言うのはね、年に一回織姫様と彦星様が会える日なの」
○○が説明するように二人の姉弟に言う。
「なになに?その二人は恋人同士なの?」
「げ、ニナ……。どこから湧いて出た」
フリックは嫌そうに眉間にシワを寄せる。
「そんなの、フリックさんのいる所ならどこへでも!!」
ニナは嬉しそうににっこりと笑った。
「で?どうなの?○○さん」
ニナは興味津々と聞いてくる。
「えーっと、確か夫婦だったはず」
○○はうーんと思い出す様に言う。
「一年に一度だけ会える夫婦?ロマンチックね!」
ニナは嬉しそうに笑う。
「そうかぁ?」
ビクトールは胡散臭そうに酒を飲む。
「ねーねー、どんな話なの?」
ナナミも興味津々と聞いてくる。
「えっと、私も聞いた話だから……。昔、働き者の貴族がいました。彼にはとても美しく働き者の織姫と言う娘がいました。彼女は織物を織るのが大変得意でした」
「おりもの?」
「布を作る事でしょうか」
ナナミの疑問にカミューが答える。
「村には彦星と言う若者がいました。彼は牛飼いでとても良く働きました。貴族の男は平民の彼を見込んで娘の婿へと考えました」
「へぇ、やるなぁ」
ビクトールは感心した様に声を出す。
「そして織姫と彦星は結婚します」
「素敵!」
「こっちを見るな……」
ニナはうっとりとフリックを見る。
「そうかなぁ?好きでもない人と結婚してもねぇ?」
ナナミはU主を振り返る。
「それもそうですが、貴族間では割りと普通の事ですよ」
マイクロトフがナナミに言う。
「えー!そうなの?」
ナナミは不満そうだ。
「ふふ、でもね、二人はとても愛し合ったの」
○○はクスクスと笑った。
「え!どれくらい?」
ニナが顔を赤くして聞く。
「仕事を忘れるくらい」
○○は静かに声を出す。
「……と、言いますと?」
カミューが先を促す。
「夫婦になった二人はお互いをとても気に入って、働き者の二人は嘘のように働かなくなったわ」
○○は困った様に声を出す。
「そこに怒ったのは親である貴族の男。彼は働かない二人をそれぞれ川を挟んで反対側に暮らさせたの」
「え?」
ニナは寂しそうに声を出す。
「二人はとても悲しみ、涙を流し続けた」
「や、やだぁ」
ナナミもニナも涙ぐむ。
「あまりにも悲しみが深い二人を哀れに思い、一年に一度だけ川に橋をかける事を許したの」
「おお!」
マイクロトフまでもが感動している様だ。
「ただし、夜、雨が振って星が見えないと二人は会えないの」
○○は残念そうに声を出す。
「何でだよ?」
フリックも興味深げに聞いた。
「星の話だから」
○○はにこりと笑って空を指す。
「なるほど」
カミューも頷く。
「じゃあ、今日星が見えたら二人は会えるのね?」
ニナが力一杯聞いた。
「そうなの。それでね、二人が出会えるとお願い事を叶えてくれるの」
「「お願い事?!」」
ナナミとニナが○○に詰め寄った。
「え、ええ。笹の枝に短冊に願い事を書いて飾るんだよ」
○○はにっこりと笑った。
「良いね!うん!」
U主はがたんと音を立てて立ち上がる。
「今日はみんなで七夕祭りをしよう!」
○○は嬉しそうに言った。
「賛成!!」
ナナミは嬉しそうに笑った。
「良いわね!賛成よ!」
ニナも嬉しそうに頷いた。
「おいおい」
ビクトールは苦笑した。
「まぁまぁ、戦続きで楽しみも必用ですよ」
カミューはにこりと笑う。
「そうだよね!カミューさん!」
U主はにこりと笑う。
「じゃあ、レオナさんはお酒を!!後、ハイ・ヨーさんには料理を頼んで!!あ、シュウにも言わなきゃ!忙しくなるね!」
U主は笑顔で言う。
「そうね!じゃあ、行こう!!」
ナナミも嬉しそうに立ち上がる。
「グリンヒルの実力を見せてあげるわ!フリックさん!残念だけど、また後で!!」
「はよ、行け」
ニナのうっとりとした顔にフリックは嫌そうに手をしっしと振る。
子供たちはそう騒ぎながら酒場を後にした。
「って、なんかまた大変な事になりそうだな」
ビクトールは言葉とは裏腹に楽しそうに声を出した。
「お前はお気楽だな」
フリックはため息をついた。
「まぁ、楽しそうではないですか!」
マイクロトフは楽しそうに笑った。
「そうですね。では、我々も様子を見に行きましょうか?○○さん」
カミューはにこりと笑うと○○に手を差し出す。
「はい!」
○○は嬉しそうに笑うとカミューの手を取った。
「では、ビクトール殿、フリック殿、我々も失礼します」
カミューはにこりと笑う。
カミューと○○そしてマイクロトフは酒場を後にした。
「あいつら仲良いな」
ビクトールがぽつりと呟く。
「へ、仕事を忘れるなってか?」
フリックがニヤリと笑った。
「ははは、大丈夫だろ?」
ビクトールが笑った。
「では、○○さん、カミュー、俺はあちらに七夕祭りを知らせてくる」
マイクロトフは診療室の方を指差す。
「あぁ、行っておいで」
カミューはニヤリと笑った。
「す、すまない」
マイクロトフはさっと顔を赤くして歩いて行った。
「あぁ、あの看護婦さんの所へ?」
○○はようやくそれに思い当たり、カミューを見上げた。
「ええ。我々は邪魔をしないようにしましょう」
「はい!」
カミューの言葉に○○は素直に頷いた。
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