除夜の鐘を聞きながら

年の瀬迫る大晦日。ここ、U主率いるアシタノ城でも、年越しをせんと大勢の戦士達が酒を酌み交わせていた。


「ふー、もうちょっとで今年も終わり…か」

○○は人混みを離れ、外に出た。

「何か着てくれば良かった…」

先ほどまで人の熱気の集まる所にいたせいですっかり火照った体だったが、冬の寒さに肌がヒリヒリと痛んだ。
それでも一歩踏み出してしまえば、空は満天の星が瞬いていた。

「キレイ…」

○○は星空を見上げながら馴れた足取りで歩く。

「あ!流れ星!!」

手を合わせ、目を瞑る。

「来年こそはカミューさんとーーー」

「私が、何ですか」
「キャーーーー」

誰もいないと思って流れ星に願いをかけようとした○○は思わず悲鳴を上げた。

「か!かかかかか!カミューさん?!」

「こんばんは」

動揺しまくる○○に笑顔で挨拶をするのは元マチルダ騎士赤騎士団隊長、カミュー。○○の想い人である。

「こ、こんばんは」

「こんな時間に、こんな所でいかがいたしましたか?」

カミューは笑みの中に鋭い視線を混ぜ、質問をしてきた。

「あ、人の熱気に当てられてしまったので、少し風に当たろうかと思いまして…。あ、それに、星が見たかったので暗い場所を選びました」

○○は何とか混乱する頭でカミューの質問に答えた。

(せっかく会えたのに、悪い印象持たれちゃうかな?)

「カミューさんは…何故…?」

○○は恐る恐るカミューを見上げた。

「はい。大晦日とはいえ、奇襲があっては困りますし、羽目を外す輩もいないとは限りませんので」

見張り役です。と、柔らかい笑顔で○○を見た。

ーーゴーンーー

「あ」
「始まりましたね」

城の方からは低い重い鐘の音が鳴り響いて来た。

「こ、こうしてカミューさんと年越しが出来るなんて、幸せです」

○○は思いきって、今の気持ちをカミューへ打ち明けた。

「…えぇ、私もです」

一瞬驚きの表情を浮かべたものの、すぐに穏やかな笑みをカミューは浮かべた。

「さあ、冷えて来ましたね。帰りましょう」

カミューの言葉に嬉しそうに頷くと、○○はカミューにエスコートされながら城へと足を向けた。

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