「あー、退屈」

「また言ってるし…」

あくびをしながら伸びをする彼に私はため息をついた
掃除中なのにすぐこれだ

こいつは根気というものを知らないみたい

「だいたいこんな狭い教室のどこ掃除しろって言うんだよ」

「資料室なんだから、棚とか棚とか…棚とか?」

「棚ばっかだな…」

資料室にひとつしかないイスを独占してそんなことを言う

ほんと、だらしないやつ

「ちょっとー!真剣にやってよ!終わんない」

「あー、はいはい」

箒を振り回して返事をする
絶対やる気ないよね、あれは…

呆れながら、ふとポケットに手を突っ込むと何かが手にあたった
あ、そうだ…
私はそれを取り出して握り締めた

「何それ…」

「どっちか選んで」

両手をぐーにしてそいつの前に差し出す

「選んで、当たりを選んだら今日のところは掃除を終わろう」

「まじ?」

当たりってなに?とか言いながら
じっと私の手を見つめる
なんか、ちょっと可愛いかも…

確立は二分の一だから、ハズレたら無理やりにでも掃除させてやる
私は心の中で念じていた

ハズレろ、ハズレろ、ハズレろ…

すると、いきなりぎゅっと右手を掴まれた
私の手を包み込むように、

「これ!」

「へ……」

「だから、こっちだって」

一瞬思考が止まった

あーそっか、飴…
手をゆっくりと開くと白い包みに入った飴が顔を見せた

あ…あたりだ

「これ、あたり?」

「あーうん…あたりだね」

「なんだ、お前。そっけないな」

私の手のひらから飴を取ると包みを開けて飴を食べだした
これで、掃除なしになってしまった

私は持っていた箒を彼に無理やり渡した

「じゃあ、これ片付けといて!」

「はぁ…?」

「どうせ帰るんだから、いいでしょ」
 
強引に渡してさっさとその場から立ち去る
だって、これ以上近くにいると顔が赤いのがバレるから

たったあれだけでドキドキするなんて
しかも、あんなやつに…

次の日、また資料室に行くとほんのりイチゴの匂いがした



 


 「はい、これやるよ」

 「え…これって」

 「昨日のお返し。こういうの好きなんだなお前って」

 「(…もう、なんなのこいつ)」

 またドキドキしちゃうじゃない…



END

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