Where is a hero? | ナノ


「教えてくれないかな。俺を避ける理由を」



やっぱり、バレてる。当たり前か。私は幸村君を一方的に拒絶した。そりゃあ、いくら寛容な性格の幸村君だって怒るだろう。彼には、私が避ける理由を知る権利がある。でないとあまりに理不尽だ。でもだからといって、馬鹿正直に「幸村君が好きだからです」とか言えるわけがない。



「た、多田さんが好きだって聞いたから、邪魔しちゃだめだと思って…」

「へ?」

「え?」



多田さんと幸村君の恋路の邪魔をしないように。そうふと出てきた記憶を言い訳にすれば、幸村君はきょとんとして私を見た。いや、へ?って言われても……。確かに佐々木さんから聞いたし、嘘ではない、はず。



「俺は別に多田さんのこと好きじゃないけど…」



嘘だった。勝手に思い悩んでいた私が馬鹿みたいだ。噂が一人歩きしただけなのかもしれないのに。
「幸村君は多田さんに片想いしてるんだって、蓮二が言ってたよ」
……あれ?確か佐々木さんは、柳君から聞いたって言ってた。柳君の情報が嘘?あのマスターや参謀という二つ名を持ち、データを大きな武器とする彼が。部活仲間である幸村君のデータを間違えてとるとは思えないし、簡単に言いふらすとも思えない。どういうことだ。わけが分からない。



「も、もしかして…それで俺を避けてたの?」

「…え、はい」

「ふふ、俺は多田さんに恋愛的な感情を向けてないから、安心して」



普段見せる優しい笑みを浮かべた幸村君に、私はどこか安堵してしまった。ああもう、どうせ佐々木さんのまじないが解けてしまえば終わってしまう関係なのに。
幸村君は私に大丈夫かと聞いた。友人とのことを気にかけているんだろう。少し気が動転していたせいか、当の私も全然気づかなかったし、思い出した瞬間石を抱えているかのように胸が重くなった。時がたつにつれ惜別の念はどんどん蓄積されるだろう。正直、この別れには心残りしかない。身構えていたけれど、本当にこれでよかったのか考えては後悔してしまう。きっと、幼い頃から親交を深めていた友人を失ったこの喪失感は一生拭えないだろう。



「……一つ聞いてもいいかな?」

「ん?」

「俺が多田さんのことを好きって言った人物が知りたいんだ。誤解を解くためにも」

「……ああ、さ、佐々木さんだけど」



噂というほど生徒の耳に入っていたのかは不明瞭だったが、大事になる前に出どころを知って解決する方がいいだろう。私はそう納得し、佐々木さんの名前を告げた。幸村君は成る程ねと苦笑したけど、目が笑ってなかった。

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