Where is a hero? | ナノ


基本私は、友人と教室でくつろぎながら休み時間を過ごす。永沢くんの椅子をかりて友人と他愛もない話で盛り上がって50分を過ごす。まあ昼食の時は一言も口を開かないのだが。相槌をうつ程度の空気は読めるので友人からもチョップされない。


「ねえ、聞いた?」

「何を?」

「佐々木愛実、テニス部のマネージャーになったんだって!」

「マジで!?」


さすがに私もこのビッグニュースには驚愕した。まあ彼女ならファンクラブからのおとがめもなさそうだし適切な人材になるのかもしれないが。


「最近佐々木さんテニス部と仲良いよねー」

「最近は屋上でレギュラーと食べてるんだって!」

「うっわ羨ましい!佐々木さんそこ代われ!」

「でも佐々木さん実際可愛いし愛嬌あるしなあ」


やはり佐々木愛実は明らかにおかしい。顔立ちと周囲の評価が見事に反比例していて、非現実的だ。そういえば私と話した時も、普通初対面で「私のこと嫌い?」なんて相手に訊ねるだろうか。それも、あまり関わりをもつことがないような相手に対して。

ここからは私の予想になるが、彼女は自分の美貌…いや、人気を過信しているのではないだろうか。それも「私を嫌う人なんていない」とか本当に思うほど過度なものだ。私が彼女に対して微妙な反応を見せたのも、それなら頷ける。

それならば、佐々木愛実は果てしなく面倒な人間だ。

少し眉をしかめて思索に耽っていると、友人二人の声がまた振動してきた。


「そう言えばさあ、幸村君最近昼休みよく教室にいるよね」


その言葉にふと視線を彼の方へ向ける。そこには確かに、ブックカバーに身をくるめた本を読む幸村精市の姿があった。最近幸村精市はよく昼休みに教室で本を読むようになった。いや、昼休みに限らず休み時間に読む頻度も多くなっただろう。これは私が幸村精市のファンだからなんて乙女な理由からではなく、隣の席なのでたまたま視界に入るだけのことだ。

確か今までの休み時間はレギュラーに限らず同じ部員と話をしていたはずだ。昼休みでも5分前まで教室にはあまり入ってこない。なぜ行動が急変してしまったんだろう。避けられているから?いや、違うな。そのような噂や情報は聞かないーー私の友人は噂好きなので、嫌でも色々な噂が耳に入ってくるーーし、むしろ彼は今でも尊敬されている。決定的な証拠に、柳蓮二が頻繁に幸村精市の様子を伺いにくることだってある。

もしかしたら佐々木愛実がテニス部のマネージャーになったことで、テニス部に大きな変化が訪れたのかもしれない。

もう一度幸村精市の方へと目をやる。これはあくまで主観的な考えだけれど、恐らく当たっている。幸村君が休憩時間を教室で過ごすようになったのは佐々木愛美が入学してからだ。

溜め息をついて永沢くんの椅子を元に戻し、幸村精市の隣である私の席に腰をおろした。

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