Where is a hero? | ナノ


俺は何でこんなにシンプルかつ簡単で目の前にある方法に気づかなかったんだ。そうじゃないか。俺が佐々木と決着をつけないかぎり、一生佐々木の毒牙に疑心暗鬼しながら広瀬さんと共にいることになる。ほぼ全生徒を従えているから、高校在籍中だけの問題ではない。

いつの間にか俺は、自ら自分の首を絞めていたようだ。深く難しく考えすぎたことによって、単純な答えを無意識に避けてしまう。テニス部部長がこのようじゃ、確かに俺もまだまだだね。けど反省タイムはそろそろ終了させないと、いつまでもうじうじしているわけにはいかない。問題はこれからだ。佐々木とマンツーマンで話し合う機会をどうやって得るか。今では佐々木の警護としてファンクラブの上層が数人、交代で見張りについている。声をかけることすら難しい。かけることができたとしても、一人にさせるには少なくとも本人の意志が必要だろう。佐々木が一人になりたいと言って、ファンクラブがやすやすと鵜呑みにしてくれるとは考えがたいけどね。放課後を狙うしかないな、早い内に決着をつけるべきだ。だけどどうやって?

ふと考えに耽っていると、広瀬さんが俺を呼んだ。いけないな、少し考え込みすぎた。広瀬さんのラブレター事件の犯人が佐々木である可能性は十分あり得る。直接的な犯人でなくとも間接的に、つまり裏で糸を引いている可能性だってある。佐々木にとってファンクラブは絶対的なマリオネット。多様性が豊富なのだ。……あ、下駄箱に手紙を入れるのはどうだろう。ファンレターやラブレターはファンクラブが管理していない。大分前に蓮二が誇らしげに語っていた。自分宛の手紙だけは、必ず自分の手で読み処理すると。唯一ファンクラブに下駄箱の手紙を操作することを禁止しているのだと。



「幸村君、」

「俺は、神の子なんて異名をもつけれど、まだまだ未完全な人間だ」

「……幸村君?」

「今日の放課後に佐々木と話し合うことにするよ。そしたらまた、広瀬さんと一緒にいてもいいかな?もしいつか皆が正気に戻ったら、苦労をかけることになるけど……それでも俺は、広瀬さんとこうしてのんびり昼を過ごしたりするの、好きだから」



いつもの調子で優しく微笑むと、ほのかに広瀬さんの頬が紅潮した。佐々木との因縁は全て終わらせて、ここからまた二人でやり直そう。俺は広瀬さんと自分の鞄を取りに一旦戻ると言って美術室を出た。手紙は最悪、簡易な文を授業中に書くしかないだろう。だがやはり下駄箱をポスト代わりに手紙を入れるのは不安だ。最近はファンクラブ内でも治安が乱れていると耳にするから余計に。安全で確実な方法はないものか。そう考えながら教室に向かっていると、ふいに背後から俺の名字を呼ぶ声がした。振り返った先にいた人物は、俺の予想をはるかに越えた。



「柳…!」

「……すまない、少し時間をいただけないだろうか」

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -