Where is a hero? | ナノ


放課後、俺は広瀬さんがいる中庭へ向かった。今日は廊下の掃除当番に当たっていたけど、D組の廊下では佐々木が掃き掃除をしている。そこら辺の女子にでも頼めば、喜んで代わってくれたのだ。歩幅を広くとり、目的地へと足を動かした。昼休みの時、げっそりとした表情で手紙を見せてくれたため場所も目的も把握している。やはり俺の推測は正しく、補正にかかっていない男子からのラブレターだった。正常とはまるで言いがたい文面だったけど。広瀬さんの様子から恋人に発展することはないと察知したものの、何か非常の事態に陥る可能性もある。そんな時に手を差しのべるのが、俺の役割だ。広瀬さんの心の救いになれるような行動をとる。

そう、俺は告白現場の一部始終の様子を見るために中庭へ向かったのだ。



「最低だなお前!俺に謝れよ!」



まさか相手が佐々木信者だったなんて、迂闊だった。この学校には俺たち以外、誰一人正常者はいないのか。ラブレターを相手が入れ間違えた…いや、それは違うな。ここまで怒鳴るほど佐々木のことが好きなんだ。下駄箱には学年・クラス・出席番号からなる4桁の個人番号が書き込まれている。自分の想いを一枚の手紙に託したのがラブレター。好きな人(それも相手が佐々木なら特に)の個人番号を知らないわけがないし、きちんと確認していれるはずだ。彼は野球部のキャプテンでもあるから尚更。

なら思い当たるのは?勿論、佐々木がわざと広瀬さんのポストに自分のラブレターを入れた可能性だ。彼女の洗脳は次第に悪化しているし、こうなることを予想した。

俺が少し眉をひそめ考えに耽っていると、鈍い音と共に衣服が地面に擦る乾いた音が鼓膜を揺らした。急いで視線を地面からそらし当人へと焦点を合わすと、左頬に手をあてて崩れ落ちている広瀬さんがいた。相手は握りこぶしをつくって息を荒いでる。

殴られた?

広瀬さんが何をしたというんだろう。彼女は不憫な被害者でしかないのに。相手は感情に任せて自ら暴力をふるうような人間じゃなかった。佐々木の毒牙は一個人の思想すら圧殺してしまうのか。もしそうだとすれば、あらゆる人権を無視した非道な行為を佐々木は行っていることになる。俺は拳を握りしめ、前進した。

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