Where is a hero? | ナノ


ザワ、と一瞬大きく身震いした。手にしていたドリンクボトルは重力にしたがって地面へ落下。おおきな水の粒が煙突状の末端からこぼれ、ボトルが地面に密着した後もドリンクは暫時間断なく細い隙間から流出する。これら一連の流れは、まるで他人事のように脳は刺激を送らない。視界に入らない。ただただ呆然と立ち尽くすだけだった。



「…幸村クン?」

「…まさか病気じゃ、」

「アーン?何だと?」



違う、とは言い切れない。もしかしたらまたあの時のように、俺は病気にかかったのかもしれない。その後は跡部の医療チームの元、急遽精密な検査が行われたがやはり異状はどこにもきたしてなかった。あの身震いはもしかすると、よく言う「嫌な予感」かもしれない。未だに不安と焦燥が体中を循環している。思い当たる節は、広瀬さんだけだった。もしかしたら佐々木と関わったのだろうか。今日は念のため安静にと言われ、テニスは出来ず幕となった。夕食の時間に顔を合わせると、心配の声をたくさんかけられた。



「大丈夫なのか?」

「ああ、心配することはない」

「定期的に検査を行った方が身のためだと、俺様は思うがな」

「……跡部」

「幸村、テメーには前科があることを忘れるな」

「…ああ、善処するよ」



正直、過去に起きた俺の病気のことを前科と言われると、良い思いはしない。まるで病気になることを罪だと言っているかの表現。カレーライスを完食し、自分の部屋へと足早に向かう。一度広瀬さんに何かあったんじゃないかと考えてしまうと、他の物事に集中できない。それも、今俺達は学校を休んで合宿にいるのだ。もしかしたら俺のこうした目の届かないところで、佐々木は動いているかもしれない。今までの努力を全て、広瀬さんとの良好な仲を、水泡に帰するわけにはいかないんだ。俺はケータイを鞄から取り出し、ぽちぽちと文字を打ち始めた。



[広瀬さん、佐々木に何かされた?]



語弊が生じたことに気づかなかった俺は、何もされてないという返事にただ安堵するのだった。

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -