Where is a hero? | ナノ


それは、
昼休みの屋上。



「佐々木さんはマネージャーを降りることになったんだ」



佐々木は目を丸くして、餌を求める金魚のように口をぱくぱくとさせた。急に計画が瓦解して驚愕と焦燥にかられたんだろう。それを見てただ俺はいい気味だと心の中でほくそ笑んだ。



「な、んで?もうすぐ合宿でしょ?なら尚更、マネージャーは必要なんじゃ、」

「マネージャーは取り寄せず、跡部の別荘のスタッフが作ることになったんだ」

「っ!な、んで、」

「…すまない。本当は俺達も佐々木と行きたかった。だがファンクラブはそれをよく思わなかったようだ」

「飯とかなら屋上で食べれるっスよ佐々木先輩!」



ファンクラブとの話し合いは、マネージャー解放と名前呼び禁止が可決して幕となった。動揺を隠しきれていない佐々木の目をみて、こぼれそうになる笑みを必死に抑える。これで皆も元に戻ってしまえばいいのに。まあ、無理かな。毒牙の効果はおさまりを見せるどころか悪化している。

もう皆、元には戻らないのだろうか?



「ファンクラブの人達が、そんなことしたの?」

「ああ、制裁を避けるにはもうこれしかない」

「奴らの言いなりになるのは癪だけどよぃ…」

「仕方ないことなんだ」



佐々木は、不細工な顔をさらに歪めた。今までありがとう、と一言告げて屋上を去っていく。俺もこんな展開を迎えるとは予想していなかったが、一番は彼女だろう。自分の計画が瓦解した気分はどうだい?俺に言い寄って来たのはミーハーだからじゃない。俺自身を奪おうとする機会を設けたかったからだろ?いや、結論を言おう。佐々木は初めテニス部レギュラー全員が好きだったし虜にさせようとした。けれど俺だけ虜にならず、むしろ嫌悪されていることに気がついた。大好きなレギュラー陣の前で俺は佐々木に、時には最低な言葉も投げただろう。それだけ佐々木が嫌いだったんだ。だからプライドをレギュラー陣の前で傷つけられる佐々木は日に日に怒りが満ちていき、俺から毒牙を使って全てを奪おうとした。まあ確かにもう部員の皆は元に戻らないかもしれない。だが生憎だけど、今の俺には広瀬さんがいるから。

俺は悲しい素振りを演出して、屋上を一人で出た。仁王が目を細めて意味深に佐々木を見ていることなんて気づきもせずに。

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