「まことー、昼ごはん食べに行こう!」
「ん、」
「どこ行く?」
4時間目の授業が終わり昼食の時間になった。お弁当箱を入れた小型のトートバッグを持って立ち上がった。正直もうここでいいから早く食べたい。なぜ最近の青春体験中な女子はこうも昼食を他所でとりたがるのか。中庭?裏庭?体育館前のベンチ?ええいどこも大体同じだ。紫外線避けの屋根もついてるし見張らしもまあまあいい。
「あの、」
「あ、佐々木さん!」
「私たちに!?どうしたの何かあった?!」
え、なに、なんでそんなに頬赤めてるの友人二人よ。このジャニーズみたいな待遇はなんなの。いやまだテニス部男子がジャニーズ扱いされるのは分かる。第三者視点で見ても文句なしの美形、努力しておさめた業績。むしろ注目を浴びない方がおかしいだろう。
それに比べて佐々木愛美はどうだ。平凡顔であることを自覚している私でもはっきり分かる。彼女は誰から見ても不細工なはずだ。勿論容姿で全てが決まるわけではないし、第一印象も大事だが中身はもっと大事だ。しかし彼女は不細工なのに周りから可愛いともてはやされている。質が悪いことに自分でも美人だと思いこんでいるせいか、本人も満更ではなさそうだ。周囲の評価と私から見る彼女との大きなギャップに、胸にかかるモヤは減ることを知らない。
「幸村君呼びに来たんだけどまだいないみたいだから…どこに行ってるのか聞きたくて」
彼女、佐々木愛美はテニス部の面々とよく行動を共にしているのを見かける。まああまり見たいものではないが。テニス部のことを思い出すと蘇る、佐々木愛美との浮ついた現場。容赦なく公衆の面前で行われる口説きや過度のスキンシップ。もう少し淡い恋心を寄せる程度で留めておくことはできなかったのか。
今みでテニスに青春を捧げ、汗を流しながら苦労したであろう彼ら一堂が、一人の不細工な女性を堂々と取り合っているのは少し滑稽な図である。むしろなぜ、盲目な行動に出るようになったのか。不可解で仕方がない。
「あー、ごめん、わかんないや」
「さっき美術で移動教室だったしまだ戻ってないのかも」
「そっか………あれ、あの」
「…あっ、まことのこと?」
「まこと!佐々木さん呼んでるよ!こんな機会二度とないって」
いらない。こんな機会いらない。どうやら本当に私に話しかけたらしく、ちゃんと反応しなさいと友人からチョップをお見舞された。なぜ今私はチョップをされたのだろう、と少しモヤモヤしながら2つ返事で返した。
「私のこと…嫌い?」
「……え?」
嫌いというよりは、関わりたくない部類に入る。ゲロ甘な光景と共にやって来るところがかなり苦手である。
もう少し周りを見てほしい。そんな風に冷ややかな目で見ているのも私だけかもしれないが。
「あー…」
「まことは元から表情に出さないだけでそんなことないよ!」
「そうそう!ね、まこと」
「………うん」
関わりたくないだなんて言えるはずもなく、結局友人のフォローに同意するのだった。