Where is a hero? | ナノ


あんなに綺麗な笑顔で、番号教えてなんて言われたら断りづらい。夕飯も食べ終わり、風呂から上がると洗濯機の上に置いていたケータイが鳴った。いや、正確には振動しただけだ。


[幸村精市です、登録よろしくね]


絵文字も顔文字も使われてない、平素な文だった。まあ使うイメージがもともとなかったために私を少し安心させた。というか、最近思うんだがあまりにも都合が良すぎないだろうか。幸村君との親交を深める過程がすこしできすぎている気がして怖い。しかし柳君のような参謀と呼ばれる策士は佐々木についている。幸村君に協力することはないだろう。そうだ、私の疑いすぎだ。これは全部たまたまであり、仕組まれているとかそんなのじゃない。そもそも仕組む必要なんかないだろうし。

最近、幸村を見ると妙に胸がざわつく。きっと私、幸村君が好きなんだろう。あんな端正な顔立ちをしたイケメンと最近一緒にいることが多いんだ。惚れてしまっても無理はない。

佐々木が私と幸村君の仲を助長しているようだ、なんて昔は言った。それが少し嬉しくもあった。けど考えてみれば、その逆は?きっと幸村君は、私が佐々木を良く思ってないことを知っている。佐々木のまじないにかかってないことを知っている。ここまで露骨に距離をとっているんだから、普通に気づくだろう。だからこんな地味な私に対して心中を明かしているんだろう。私が正常だから、仲良くしてくれた。決して、私が好きだからではない。そんなの、ただの惨めな自惚れ。私が幸村君に想いを伝えれば、きっと幻滅されるだろう。

それにもしこのまじないが解けてしまえば、私は必要とされない。仲間が正常になるんだから、当たり前のことと言ってしまえばそれまでだ。あれ、何だか私、まじないが解けるまでの代用品みたいだ。いやいや、あの優しい幸村君のことだ。決してそんな風に思ってなんかない。きっと。

どうせ報われない恋心なんだ。想い続けるだけにしよう。どうせ皆が元に戻ってしまえば幸村君も自然と私から離れる。儚い初恋でいいじゃないか、幸村君といれるだけで私は幸せ者なんだ。


ワガママは、言わない。せめて今だけでも一緒に居させてほしい。

佐々木のまじないが解けるまで。



[わかった。よろしくね幸村君]



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