Where is a hero? | ナノ


放課後、最終決戦だ。俺はメールを送り、空き教室を指定した。部活もあるからできるだけ早めに終わらせたい。広瀬さんに別れを告げて空き教室へと足を運ぶと、既に人影が一つ浮き出ていた。ゆっくりと扉を開けると、そこには肩を少し上げて寒そうに女々しく椅子に座る佐々木がいた。扉の開ける音に反応してこちらに気づいた佐々木は、ゆっくりと立ち上がり袖を指の第一関節程まで伸ばして近づいてきた。顎に手を添えて何かあった?と尋ねる佐々木に怒りが増す。そののんびりとした声色はいかにも小動物らしさが含蓄されていた。これも全て計算しているのか。こんなに穏やかな顔をしておきながら、頭の中では人間を貶めたり懐柔させる策を練っているのか。なんて残酷な少女だ。そう考えると、自然と俺の眉間には皺が寄った。



「待たせてすまない」

「いいの。早く本題に入ろう」

「そうだね……単刀直入に言うよ」



――今後一切、広瀬さんには近づかないでほしい。
その言葉に佐々木は大きく目を開いた。理由を詮索しようとするあたり、冤罪だと思わせたいんだろう。だが、うちには詐欺師がいたんだ。声音の些細な変化、声の妙な震え、一瞬見せた視線の移動。どれも取り繕ったものだと俺にはすぐに分かるものだった。仁王はもっと上手く嘘をついたよ。



「君には感謝しているよ。うじうじと行動に移せなかった俺に、広瀬さんと接触する機会を与えてくれた」

「え、」

「そもそも行動に移せなかったのは、ファンクラブに恐怖していたからなんだけどね。女子高生の嫉妬や妬みは本当に残酷だ。俺が原因で、陰湿ないじめを生み出す恐れを考えてしまった。広瀬さんを、傷つけたくなかったんだ」

「は、」

「でも君のおかげでその心配はなくなり、俺はやっと広瀬さんを振り向かせることができたんだ」



ちょ、ちょっと待って!そう大声で静止を促した佐々木は、口の端をひくひくと引きつらせていた。何を焦っているんだろう。広瀬さんが好きだと知っていたから、俺との仲を崩壊させようと接近したんだろう?思い通りに愛さなかった俺に対する憎しみが、結果的に大きく広瀬さんを傷つけた。俺と広瀬さんの間に、亀裂を入れようとした。



「ゆ、幸村君から広瀬さんに近づいたの、?」

「そうだよ。初めは広瀬さんも佐々木に目移りしていたからなびかせるのに苦労したよ」



ぴしりと佐々木は硬直した。

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テーマ「人外ファンタジー」
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