Where is a hero? | ナノ


「今日、ミーティングだけなんだ」



へえ、と声を上げた。確かに大降りの雨が今朝から襲ってきていたし、コートが万全な状態じゃないのだろう。どの部活よりも一層厳しいテニス部のことだから筋トレするもんだと思っていたが違うらしい。たまにはこれを機に安息日を、とのことだ。



「広瀬さんは今日の放課後、どうしてるんだい?」

「美術室で幸村君に頼まれた絵描いてる」

「!」



昨日から描き続けているが、予想以上に筆が動く。スターチスを見てビビッときたせいか無意識に色を重ねていた。直感的なものだろうと思ってはいるが、ここまで筆が進んだことなんて今までなかったから自分でも驚愕している。



「もうすぐ完成するけど…」

「今日ミーティングが終わったら美術室に行ってもいいかな?」



え、と私は動きを止めた。それは絵をとりに来ると解釈すればいいのだろうか。わざわざ私を美術室まで迎えに行って一緒に帰りたいなど、さすがに幸村君は思ってないだろうし。幸村君が言うにはミーティングは1時間程で終わるらしい。確かにそれだけあれば何とか完成するかもしれない。

しかしそう急がなくても明日でいいんじゃないだろうか?急ぎで渡したくはないしできれば今日ゆとりをもって絵を完成させて、次の日に渡したかった。



「お願い、できないかな?」

「いや、いいけど…」



なぜそんなに急かすのか。そして幸村君の心理がうまく理解できないまま、あっという間に今日の放課後を迎えた。クラスの皆は成績表の返却もあってか普段以上にうるさかった。ちなみに私の順位は全体の真ん中あたりだった。それでも友人二人はやっぱり、佐々木の話しかしなかった。佐々木は成績が、聞くところによるとあまりよくはないんだとか。勉強教えてあげたいなんて庇護話ばかりを延々と語られ、げっそり萎えてしまった。とても庇護したいと思えるような顔立ちを佐々木はしていないというのに。美術室の中に入り、キャンバスをセットした。

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -