Where is a hero? | ナノ


「付き合ってないみたいだけど、告白はしたらしいよー。何でも教室で二人きりの時にさ、丸井が佐々木さんを押し倒したらしくて。ファンクラブに入ってる人が目撃したから間違いないし……今日の昼休みにでも行ってくるね、丸井んとこ」



注意しとかないと、そう意気込む友人。どうやらこれが丸井と佐々木の噂の火種らしい。元々ミーハーでテニス部レギュラー陣に焦がれていた友人が、佐々木じゃなくて丸井を敵視する。言わずもがな不可解な話だ。抱えていたモヤモヤを晴らす宛もなく、光陰矢のごとく残り2時間の授業が終わった。



「広瀬さん、俺掃除だから先に行ってもらってもかまわないかな?」

「ん」



正直、私もここまで幸村精市と親しくなるとは思わなかった。普段はレギュラーの柳君あたりと帰るんだろうが、佐々木がいるから帰るに帰れないんだろう。佐々木さんがまるで私と幸村君との関係を助長しているかのようだ。

鞄を肩にかけて図書室へと向かうと、途中で友人2人の声が空き教室から聞こえてきた。こっそり窓から様子を窺えば、そこには丸井君もいた。



「あんた、邪魔」

「ほんとそれー。佐々木さんは皆に優しいから何も言わないけどあんまり調子にのらないでよね」

「は?んだよそれ。佐々木は俺のに決まってんだろい、口出しすんじゃねーよ」

「ふん、ファンクラブの忠告を聞かないわけね」

「つーかさ、お前らのそれ、愛実をとられた負け惜しみじゃね?」

「それちょっと言えてるかもー。でもファンクラブにたてついたこと、」

「「後悔させてあげるから」」



佐々木さんを奪い合う3人の醜い対立。おかしいな、私の友人は確かに気が強くて他人に生意気だけど、自ら勝負を仕掛けることなんてしなかった。確かに校則も違反してるし客観的に見れば恐怖の対照だったかもしれない。けれど、二人とも根は悪い子達じゃなかった。明らかに佐々木さんが関わる前後で、友人の性格に変化が明瞭に現れている。

何が悲しいかって、佐々木に友人をとられたような気がするから。佐々木のせいで友人が狂ってしまった気がするから。なぜみんなを狂わせてまで彼女が愛されているのかは分からない。
けど頼むから、数少ない私の大切な人を奪わないでほしい。


私はそのまま足取り重く、図書室へと踵を返した。図書室に入って勉強道具を出しても尚、集中できる気がせずにただただ呆然としていた。

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テーマ「人外ファンタジー」
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