Where is a hero? | ナノ


今日は広瀬さんが普段より元気がないように感じられた。感情などはほとんど内面に押し込む質なので俺もほとんど勘だった。目はどこか虚ろで、授業中も黒板に視線を投げてはいるが焦点は合ってない。勘だと先述したが同時に確信もしていた。

3時間目の授業が終了し、昼食まで残り1時間となった。移動教室ではないため教室でゆっくり過ごせる。普段なら1時間後に思いを馳せながら快適な授業を受けるはずが、佐々木が来てからはどうだろう。今では佐々木をちやほやするばかりの部員達に呆れ、昼食すら教室で食べるようになった。最初は心配して柳やジャッカルあたりが様子を見に来てくれた。しかしそれも最近ではほぼゼロに近い。本当に最初だけだった。おそらく佐々木とできるだけ長く一緒に居たいんだろう。

皆で笑いあって、励まし合って、努力を惜しまず王者の看板を貫き通した。共に成長したほんの1ヶ月前が今では邯鄲の夢のように感じられる。重い溜め息を吐いて日本史の用意を取り出すと、広瀬さんから声をかけられた。



「!広瀬さん、」

「ああ…いや、」

「ふふ、どうしたの?」

「…私、幸村君に絵を頼まれたけど、よく考えたら幸村君の好みについて何も知らないから」



広瀬さんから、俺の好みについて質問してくれた。先程のあくせくはどこへやら、高揚する気持ちを必死に抑えて植物だと告げた。

幅広いもので、植物を分類するのは草・木・花にとどまらない。菌類や細菌類、藻類なども植物に含まれるものもある。俺は花が一番好きだけどね。どのような植物が好みなのかと次に広瀬さんは尋ねてくるだろう。なんだかこう人間の言動を予測して行動に移すと、柳みたいだと思ってしまう。彼みたいに確率まではさすがの俺でも出せないけれど。



「植物…じゃあどんな植物が好き?」



ほらね、ビンゴ。
だから俺がこう返せば、



「俺は花が一番好きかな。そうだ、よかったら今日の放課後にでも見に行かない?学校の最寄りにいい花屋があるんだ」



また一緒に居る機会が増えるだろ?



「でも私今日も図書室に行く予定が、」

「図書室で勉強した後一緒にどうかな?俺もテスト期間中は図書室で勉強するんだ」

「、幸村君も?」

「うん、そうだよ」



広瀬さんは少し間をおいてこくりと頷いた。間をおいたのは疑いや躊躇からきたわけではなさそうだ。俺からすれば必然的に、計算して会うように仕向けている。広瀬さんからすれば少し強引な展開だっただろうか。でも一緒に寄り道の約束ができたのは、俺の中でとても大きい。

広瀬さんと一緒に花屋、考えただけでこれ以上ないほどの幸せを胸のあたりで強く感じた。チャイムの音がなる数分後には昼休みのことなんてどうでもよくなっていた。花屋に行ったらどんな花を紹介しよう、広瀬さんの好きな花は何だろう。そうだ、絵をもらったお礼に俺からも、広瀬さんが好きだと言った花の絵を描いてプレゼントするのはどうだろう。柄にもなくそんな浮かれたことばかり考えていた。

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -