Where is a hero? | ナノ


2時間目の授業の途中。丁度開始から20分くらい経過していて眠気が押し寄せるのに絶妙な時間帯だった。メカニズムは知らないが、きっと50分間授業の20分は一番中途半端な時間なんだろう。集中力が持続する時間は50分だというがそれは本当だろうか。なんて考えつつも国語の授業を真面目に受けていた、そんな時だった。



「すみません、遅れました………ってあれ?」

「……佐々木、お前は確かD組じゃなかったか?」

「えっ、ここって…」

「A組だ」

「きゃっ、間違えちゃった!」



授業のやる気・集中力が一瞬にして興ざめた。なんだよ「きゃっ」て。可愛らしい仕草をとるのに顔は全然改善しないのが不思議だ。きっと自分でも「私は美人」なんて白雪姫の継母みたいなことを思っているんだろう。言動一つ一つに形だけとりつくろった可愛いを組み込まないでくれないかな、虫酸が走る。



「"きゃっ、間違えちゃった!"だって、超可愛い!」

「モデル顔負けだろこれ!」

「え、何々佐々木さん?どこどこ…ってあ!いた!うわ可愛いー!」

「ひゃっ!、あ、あの、失礼しました!」



彼女は駆け足でこの教室から出ていった。先程まで眠りについていた生徒もみんな顔を上げて、佐々木に拍手や喝采をおくる。中には口笛まで響いた。これだけ耳にこたえる歓声などないだろうと言い張れるほどにそれは酷く俺の機嫌を悪くさせた。



「まこと、今の見た?!あの佐々木さんだよ!」

「あーうん("あの"って何、"あの"って)」

「まじ可愛かったんですけど!」

「小動物って感じー!」

「………そうだね」



遠巻きに会話する広瀬さんとその友人二人。正直、不思議なことに普段広瀬さんと共にいる友人二人は全く性格が正反対だった。濃いめの化粧に着崩れした制服、どうでもいい他人には高飛車にでる派手な女子。それが彼女達だ。泰然自若とした広瀬さんとはまるで違う。一体どういった巡り合わせをしたのだろう。

いや、今はそんな場合じゃない。直接関わってないとは言え、広瀬さんが佐々木の毒牙に少し影響を受けてしまった。佐々木を褒めちぎる友人二人が今は憎くて仕方ない。毒牙の促進剤という存在を俺はどうやら頭にいれてなかった。だめだ、大きく行動しないと、明らかに俺が不利だ。

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テーマ「人外ファンタジー」
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