「沢山食べるんだね」
「そういう波江はもう少し食べた方がいいんじゃないかな」
「女子はみんなこれくらいだよ」
なんと跡部財閥は三食全てバイキングらしい。量も種類も豊富で思わず拝みたくなった。そんな中私がおぼんにのせたのは、煮魚と味噌汁と白米。平素だが転生前、一人暮らししていた頃は質素な料理ばかり食べていたため、これが性にあう。それに量的には女子中学生がとる摂取量と同じくらいだ。むしろ最近の若者は太るからと言って、カロリーメイト1本で済ますことが多いと聞く。それに比べれば、幸村君が気にする程でもないだろう。
「お、おいしい…」
「ふふ、そうだね」
回りから視線を感じる。すごく感じる。恐らく唯一女子である私が、幸村君と二人で食べているからだろう。そしてこの場にそぐわぬゆるゆるな空気が、ここだけ纏っているからだろうか。どちらにせよ、やばい幸村君すごく優しい。笑い方からまず優しい。そして輝いてる。私はなんてイケメンと友達になったんだ。
「そのヒラメ、一口ほしいな」
「あ、どうぞ」
「波江もはい」
そう言って私の皿の上にのせられたのは一口大にカットされたハンバーグ。私は大丈夫だよ、と返却しようとすると幸村君に食べてほしいなと言われた。
「フェアじゃないだろ」
平和を実現する人のことを神の子だと新訳聖書では言うが、その通りだ。目の前にいる"神の子"も平和を実現する優しい天使だ。そう素で思った22歳独身女性だった。