群集心理 | ナノ




ちなみに私の階層は立海と同じ西館だった。氷帝が中央口、青学が東館だ。西館の私の個室しか風呂がついてないらしい。
幸村君が荷物を持つと声をかけてくれたが、さすがに自分の荷物くらい持たなければ。修学旅行と同じように、母親に荷物を持たせてはいけないのだ。
なんとかやんわりと断り、皆で自室へと向かった。


「扉から高級そうぜよ」

「さすがは跡部財閥といったところか」


正直、内装がものすごく気になる。あの世界から注目を寄せる(らしい)跡部財閥が用意した別荘だ。私は今も転成前も所詮は庶民。豪勢な部屋に住んでみたいなんて思うことはよくあった。それが数日間、宿泊というかたちで実現するのだ。
私は深呼吸を数回繰り返して金のドアノブに手をかけた。


「うわ…」


キイと音をたてて扉を引くと、白を基調とした清潔感ある部屋が視界いっぱいに写された。金色のような派手な色も、白とかけあわせるとこんなに清楚になるのか。跡部君の家もこんなかんじなのだろうか。とかどうでもいいことを考えながら荷物を置くと、タイミングよく放送が流れた。広場に集まって会式を行うらしい。広場はここからそう遠くない。とりあえず歩いて現地へ向かった。


――――――――


着くともう大半の人が整列してた。行動が早いなと驚いて見てると、会式が始まった。跡部君の話を聞きながらやっぱり中学生とは思えないな、とか考える。注意事項などを聞き終えると、マネージャーを紹介するから来いと言われた。え、何それ聞いてない。まあ打ち合わせもしてないし、本当に挨拶程度でいいよね。そう思いながら壇上に立った。


「立海から臨時マネージャーとして来ました佐々木波江です。4日間、よろしくお願いします」


自己紹介は礼儀正しく最低限に。特に変わったところも見られない、平素な挨拶を済ませるとすぐに解散の合図が出た。初日の朝は筋トレや走り込みがメインらしい。練習試合は明日かららしく、負のオーラがそこら中を漂っていた。

とりあえずドリンクを多めに作ろう。休憩時間まで時間の余裕はあまりないから急ピッチで仕上げて洗濯の準備に取りかからないと。そう時間配分を考えながらこの合宿をやり過ごせるか少し不安になった。

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