「―……て、……きて、
起きて」
「……へ、あ、うん私パンがいい」
「…パン?」
「………あ、ゆ、幸村君」
「ふふ、おはよう」
「オハヨウ…」
うわやっちまった。めちゃくちゃ寝ぼけてた。しかもそれをあの幸村君に見られた。
恥 ず か し い !
いや、今の絶対馬鹿だと思われた。幸村君は寛容すぎるから微笑みで受け入れてくれたんだ。やり直したい。数十秒前に戻ってやり直したい。
「ごめんね、起こしちゃって」
「わ、私の方こそごめん!自分の睡眠管理もきちんとできないなんて、マネージャー失格だもの」
「そんなことない、むしろ少し頑張りすぎだよ」
「が、頑張りすぎ?」
「夏休みの時もそうだけど全て自分で処理しようと頑張りすぎな気がする」
「あれくらい当たり前じゃないの?」
「当たり前じゃない。働きすぎて疲労を蓄積させたくないんだ、たまには休憩も必要だよ」
「休憩も必要って…」
「波江は気づいてなかったけど、昼休み以外休憩とってないんだからね」
言われてみれば確かに、昼休み以外はせっせと働いていた。社会に出たらこんなもんだと言い聞かせて働いていたけれど、何せ中学校の部活のマネージャーだ。働きすぎて倒れたりしたら余計迷惑をかけるだろう。
「ご、ごめん」
「あとさ、」
「は、はい」
「何か相談したいこととか困ったことがあったら、できればでもいいから、俺に相談してほしいんだ」
神だ。ここに神がいらっしゃる。
「気持ちだけで十分嬉しいよ。けど迷惑かけたくないから」
「迷惑なんかじゃないし、むしろ俺がそうしてほしいんだ」
「(堀なんかに)負けたくない。俺だって波江が大事なんだ。もっと頼ってよ」
負けたくない?え、誰に向かって闘志を燃やしてるの幸村君。しかしそんなの関係ない。彼が私にすごく優しくしてくれていることは事実なのだから。
「ありがとう、これからはそうするね」
「!、本当?」
「うん。幸村君優しいんだね、ありがとう」
そう微笑むと、私より何倍も綺麗であろう笑みを幸村君も見せてくれた。ビバ・青春だな。とりあえず困ったことがあったら幸村君に聞こう。
「皆外で待ってるから降りよう」
「え、私そんなに寝てたの?!ごめん…」
「謝る暇があるなら降りる降りる」
「え、あああはい」
こうしちゃいられない、と足を急かした。真田君が係員から預かっていた私の鞄を渡し、部屋に運ぶように促した。あれ、でも部屋割り聞いてないよね、「お楽しみだ!」的なこと言われて教えてくれなかったよね氷帝。と首を傾げるとそこに掲示してあると言われた。そこ、真田くんの指先が行き着く先は建物の外壁だった。
白い大きな紙が1枚、確かに貼ってあった。全体の見取り図と階層と部屋割りもちゃんとあった。基本二人部屋なので1部屋には二人ずつ配置されている。よっしゃ一人部屋な私は勝ち組だ。あ、嘘です冗談です。
ただ、一つ突っ込ませて。合格発表かここは!