今日からまた学校生活が始まるのか。まあ臨時マネージャーとして部活を支えていた夏休みよりは穏やかに過ごせそうだ。にしても最近、周りの中学生のノリにだんだんついていけるようになってきた。まだ半年もたってないのに慣れって怖い。
そんなわけで普段通り身支度を済ませ、長い道のりを経て立海まで来た。最初はあわないローファーに足が悲鳴をあげていたけど、反抗期の時期も過ぎたらしく今や絆創膏も必要なし。
目覚めもよかったせいか一段と今日は機嫌がいい。足取り軽く下駄箱の扉を開けると一枚の手紙が上靴の上に伏せられていた。
「………何これ」
「あれ、波江おはよう」
「あ…おはよう」
「どうしたの?…って、その紙、」
「あーいや、まだ中見てないから分からないけど!女子からの呼び出しだったらどうしよ…」
「波江は女子に呼び出されるようなことした?」
「え?いや…してない」
そういやファンクラブってまだないんだっけ。いや、ファンクラブがなくても個人で好いている人なんて山ほどいるだろう。今このタイミングで呼び出されてもおかしくはない。でも始業式だけはやめてほしい。
「大丈夫だよ、見えない敵に怯えて情けないよ」
「そ、そっかありがとう」
「うん。あ、中見ないの?」
「みるみる」
説教上手だなあ、としみじみ思いつつハートマークのシールを剥がす。いやもうこの時点でラブレターのフラグびんびんだけど。
「なんて?」
「放課後屋上って」
「………告白かな。返事はどうするつもりなの?」
「うーん、まだちょっと早すぎる気がするから断ろうかと」
「そっか」
勘弁してよ。
確かに中学生の雰囲気に慣れてきたとは言ったけど、付き合うなんて信じられない。年の差は最高5歳までって決めてるんだごめんね悩み大き若者よ。
―――――――
「どうしよう幸村君」
「どうしたの?」
「どうやって断ろう…」
始業式の間もホームルームもずっと考えていた。部活に入ってさえいれば忙しいからと断ることができるのに。彼氏も好きな人もいないし…
「俺が彼氏役しようか?」
それだ!ってまてまて幸村君には部活があるはず。そう答えるのを躊躇うと「掃除で遅れるって言えば大丈夫」と言ってくれた。私はその申し出に肯定し、二人で屋上へ向かった。