8月30日。ついに夏休み部活最終日を迎えた。もう太陽が西にとっぷりと沈み浸る時間だった。
「私は今日で、マネージャー終わりだね」
「ああ。臨時ではなく、通常のマネージャーになる気はないか」
「うーん、考えとくよ」
苦笑してそう柳君に返すものの、正直もういいかな。実際私は運動がそれほど得意ではない。暑い中ドリンクを作り洗濯物を回収し洗濯機を動かしドリンクとタオルを部員一人一人に配布する。
そもそもこんな体力仕事を、よく私は弱音も一切吐かずやり遂げることができたものだ。ちなみに氷帝が企画した合宿については大会後、すぐにファックスで送られてきた。1週間レギュラーだけでの練習試合を主としたもので、他に青学がくるらしい。既に知ってる学校名で、無論私は相当驚いた。ちなみに全国大会上位の3校が参加するので、四天は対象外らしい。
顧問の集合の声で部員が全員集まった。
「佐々木は今日をもってマネージャーを終了することになる。佐々木、何か言いたいことはあるか?」
「はい。この夏休みの間、皆と共にサポートに励むことにより、仲間との絆や信頼、沢山の大切なことを学ぶことができました。私にとっても皆にとっても、貴重で充実した時間を過ごせたと思います。本当にありがとうございました」
「お、おう、最後までしっかりしてんな」
幸村君に触発されて、なんて口が裂けても言えない。言い終えたと共に身体中を束縛する緊張感が一気に解れ、ふうと肩をおとす。
大変だった。しんどかった。でもそれ以上に楽しかった。最初は仕事以外で部員と話すことなんて滅多になかった。けれど、時がたつとだんだん打ち解けてきて、私も自然と笑うようになっていた。少し、名残惜しくもある。
そう瞳を伏せていると、私の名前を大きな声で呼ばれた。いや、正確には名字だけれど、びっくりして思わず肩を震わせてしまった。
「ちょっとの間だったけど佐々木さんがいてくれたおかげで、部全体が柔らかくなった気がするんだ」
「え………?」
「これは、部員皆からのお礼!大事にしろよな!」
高倉君と平松君がそう私の前に出て、あるものを手渡した。それは、白いフォトフレームに入った皆で撮った写真。全国大会優勝記念に、皆で撮った、写真。
ありがとう。そう受け取り胸に抱いた。彼らは中学生なんだから、なんて言い聞かせる余裕もないほど幸せの洪水にのまれるのだった。