「こうして全国大会で優勝できたのも、一人一人が一念発起して堅実に部に取り組み、確実な努力を積み重ねたおかげ。でも俺達が目指しているのは三連覇だ。ここで満足することなく更なる高みを目指し、切磋琢磨して次は二連覇を成し遂げよう」
幸村君、本当に中学生?
所変わってここは焼肉屋。丸井君の「打ち上げしようぜぃ!」の一言からこうなりました。予約もしてないしパーティー用の席もなかったこの店では4人掛のテーブルを沢山借りて一つに繋げている。40人近くいるのに、まさか店主が許可してくれるなんて思わなかった。
いやそれにしても、幸村君に驚きを隠せない。中学1年生とはとても思えないスピーチだ。ああ、この人たちにそういう年齢つっこみは全て無意味だっけ…。
乾杯後は大きな歓声が響き渡り、肉争奪戦争が幕を開けた。丸井君の手の届く範囲では肉を期待してはいけないことを学びました。なんと目の前の席なので驚く程肉がこない。不思議。私さっきからもやしばかり食べてる。
「丸井」
「ん?あ、幸村く…」
「何肉ばかり食べてるわけ?野菜たべなよ、ほら」
「え……って多!!」
幸村君が大皿に盛られた野菜の山を、丸井君の席に置く。お母さんだなあ、肉ばかり食べてたのを心配したんだね。微笑ましく見守りながら玉葱を口に含んだ。程よく焼けてて甘みもある、すごくおいしい。
「ほら波江、肉」
「わ、ありがとう」
「さっきから一口も食べてなかったでしょ、丸井のせいで」
「ゔっ」
「あ、知ってたんだ」
「勿論。これで丸井も暫く肉は食べないから」
「そうだね、ちゃんと野菜とらなきゃダメだよ、丸井君」
「お、おう(佐々木なんか勘違いしてね?)」
皿に置かれたカルビをはむはむと食べる。おいしい、脂身がのっていて口内でとろける。はああ幸せ。
幸村君のご好意に甘え、顔を綻ばせながらもう1枚また箸でカルビを摘まむのだった。