「出発しまーす」と低いアナウンスが聞こえ、バスは動き始めた。
「佐々木さん!」
「あ、高倉君、どうしたの?」
「この前は手当てありがとう」
「ううん、大丈夫そうでよかった」
「俺佐々木って地味でつまんねー奴だと思ってたけどいい奴なんだな!」
「前半否定しないんだね平松君」
「つまんねー奴だとはもう思ってないから安心しろ!」
「まあ私、地味だよね」
「自覚済み?!」
前の席に座る高倉君と平松君が話しかけてくれた。あれ私まともに同じクラスの男子と会話したの初めてじゃない?しかも、結構親しみをもって接してくれている。素直に嬉しい。
「大丈夫、波江の良さは俺だけ知ってればいいよ」
「あれ、大丈夫かなそれ」
「うん。俺以外の人に知られる必要ないでしょ」
「そっか」
「(え、佐々木さんなんで今の肯定できたの?!)」
「(やっぱあいつ隠れ天然おもしろキャラだな)」
「(あれ無自覚とか恐ろしすぎじゃ)」
「(よっしゃ、俺らで重宝しようぜ!)」
「(ってか幸村君怖!)」
1時間程でバスは会場へと到着した。ずっと皆と喋っていたから案外時間の経過を感じなかった。柄にもなく、もう少しだけ喋っていたかったな、なんて思ってしまった。