群集心理 | ナノ




今日もいつも通り4時に起きた。てか今日の部活が午前までで心底よかった。もしオールなら弁当箱ないからコンビニ弁当になるところだった。おじさんから仕送りはくるものの、気をつかわせたくないから極力無駄遣いは避けたい。昼食は帰りにスーパーで食材を揃えよう。


そう今日の計画をたてながら学校へ着き、ドリンクの用意を始める。最近さらに効率よく仕事を行えるようになってきた。慣れって怖い。7時半に未来の3強、幸村君と柳君と真田君が姿を見せた。相変わらず来るのが早い。


「おはよう波江」

「おはよう」

「うむ、ドリンクはもう作り終えたのか。マネージャーがしっかりしていれば部員もけじめがつく」

「ありがとう」

「ほう、記録更新だな。データを修繕しておこう」

「そ…そう」


やっぱりまだ慣れません。柳君曰く5桁の計算はできて当たり前らしい。うわあ、これぞまさしく前世とのジェネレーションギャップ…いや全然違うか。
頬の筋肉をひきつらせていると、ちょろちょろと他の部員も登校し始めた。そろそろコート整備を行うか、って頃に思わぬ訪問客が顔を見せた。


「佐々木さん」

「あ、堀さん」


返すね、ありがとう。そう手渡されたのは綺麗にラッピングされているたぶん弁当箱。でも外見ただのプレゼントにしか見えないよ、これはボケなの堀さん。

一人で取り乱しながら受け取ると「ばかあああっ!」とビンタされた。ばちん、生々しい音がテニスコートに響き渡った。ぺちんではなくばちんだ。


「嘘つき!佐々木さん昼から部活ないって言ってたのにあったじゃん!佐々木さん昨日昼ごはん必要だったじゃん!私のことは放っといてもよかったのに…なんで自分を犠牲にしてまで弁当渡したのよぉっ!」


あれ、私…お弁当あげただけだよね?


堀さんのマシンガントークに若干、いやかなりついていけなかったけど…まあ言いたいことはわかった。にしてもこれ本当に弁当あげただけだよね(2回目)?何これいつの時代の昼ドラ?殺人事件でも起きました?え、これもボケなの?これ天然なの?ちょっと周りの空気が変になってきたんだけど。弁当箱と中学生のボケクオリティ高すぎるんじゃない?
そう堀さんの予想を反する言動に混乱していると、堀さんは目からぼろぼろと大粒の涙をこぼした。あああお願いだから泣かないで堀さん…!ここはなんとかして安心させないと…!


「堀さんが困ってたから、助けたかったの。それじゃ駄目、かな?」


なんかこれ、私悪のりしてない?違う、私は発端が弁当だとちゃんと認識して言ってるから。決して悪のりではない。てかもしかして堀さんってあの有名な中二病?これが中二病?さすがにちょっと中二病は…


「うわあああだいすきいいい!!」


堀さんは顔を林檎のように真っ赤に染めて、ぎゅっと私を抱き締めた。うん、中二病でもいける。そもそも偏見はいけないよね。二十歳を越えた大人がやれやれ何を言ってるんだ。

私もなぜか「ありがとう」と背中に手を回し抱き合う体勢をとると、部員から一斉に拍手が送られた。あれ、なんだこれ。

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