群集心理 | ナノ




調理実習当日。これは得意分野でもあるし高評価なんて楽勝だな、とか余裕こいてたのが裏目に出たのか平松君がエプロンを忘れて減点された。……うん、何も裏目に出てないね。くそ、平松め…。しかし練りに練った役割分担が吉と出たらしい。無事に5人分のハヤシライスセットを作ることができた。堀さんと平松君には常に高倉君が監視しながら鍋を見てくれたので安心して任せることができた。さすがに鍋に蓋して強火にした時は焦った。それ焦げる!!


「うんめー!」

「うん、美味しいよ波江ちゃん!」

「うん、おいしいね」

「僕二人の面倒見るばかりで自分の役割果たせなかったんだけど……」

「高倉は十分頑張ったよ」

「ごめん、私が代わればよかったね」

「そ、そんな大丈夫だよ、ただいつも以上に疲れたから……」

「「ああ……」」


たつ鳥跡を濁さず、この調理実習は片付けるまでが実習内容だ。食後はさすがに大丈夫だろう……か。さすがに食器を片付けたり台を拭いたりするくらいならできるだろう。そういえば幸村君のエプロン姿がもはや主夫にしか見えなかったんだがどうしよう。爽やかに笑いながら玉ねぎを手際よく刻む様は本当に素晴らしかった。欠点があるのか逆に疑問を抱いたけど。

班全員が、好評だったハヤシライスセットを平らげ、満足げに後片付けを開始した。皆食器を洗ったり拭いたりしていると、なぜかカレーライスの話題が上がった。ハヤシライスといえばカレーライスだよな!と訳のわからない持論を堂々と口にした平松君が原因である。中辛のカレーにラー油をかけるとすごく美味しいんだよ!そう絶賛する堀さんに心底驚愕したが、高倉君の一言はさらに衝撃を与えるものだった。

「僕は甘口のバーモンドにハチミツをかけるかな」

高倉君がまさか甘口にこだわるとは思ってもみなかった。それも名指しでバーモンドオンリー。家で食べ慣れているためバーモンドしか口に入らないらしい。中学生の男子だからバーモンドの甘口も分からなくはないが、それにプラスでハチミツを加えるとなると解せない。私からすればどうしても蛇足のように感じてしまうが、本人からすると美味しいのだろう。あのげらげらと中学生らしく下品に笑う平松君も、気持ちを整理する前に言葉を発する堀さんも、この時ばかりは口をあんぐり開けて硬直していた。唯一白けた空気が訪れた瞬間であり、こうして調理実習は幕となったのだった。

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テーマ「人外ファンタジー」
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