次の日、高倉君からノートを借りて、授業がどこまで進んだのか把握して学校に来た。というか、一晩で約1週間分のノートを全科目うつすのは頑張りすぎた。
「佐々木ー!ちっす」
「あ、佐々木さん、おはよう」
「おはよう波江」
「うん、おはよう」
「そういや合宿、どうだった?」
「楽しかったよ」
「まじかよー!俺も行きたかったんだけど!」
「もう合宿は当分予定してないけど…行きたいなら強くなって這い上がらないといけないかな」
「うっしゃー!まずは目指せ準レギュってとこだな」
握りこぶしをつくり、闘志を燃やす平松君を見て頬が緩む。調子乗りの平松君も普通に優しい高倉君も、本当に新鮮だな。忘れないうちに高倉君にノートを返すと、ソプラノの高い声が横から降ってきた。
「あの、波江ちゃんおかえり…!」
「あ、ただいま堀さん」
「寂しかった!」
「私も寂しかったよ」
「ほ、本当に?!」
「うん」
「……堀さんと佐々木さん、どこぞのカップルみたいだね」
「あいつらマジ面白すぎだわ。あ、いけね、ノート書かねーと」
「(平松君はまた変なことやってるし…)」
嬉しい、と抱きついてくる堀さんの頭を撫でる私。いや、この関係は彼氏彼女というよりは甘えたがりな子どもと面倒見のいい母親。あ、堀さんなら軽くマザコンとかになってそう。
「あ、花の水やり…」
「大丈夫!責任もってちゃんと果たしたよ!」
「本当?よかった…」
「見て!一昨日波江ちゃんに見せようと思ってとっておいたの!ピクミンみたいなのがあったからから!ほら!」
「(ちょ、それ球根…!)」
「…ねえ、あと2分で授業始まるから座ったほうがいいんじゃないかな?」
「後2分くらいいーって!」
「私も座ったほうがいいと思うけど」
「やだ!まだ波江ちゃんといたい!」
「そうだぜ!堀の言う通りだって」
「ちょ、平松君…」
「へえ、座らないんだ?」
「「「ごめんなさい」」」
幸村君の命令にびしっ、と表情が固まる三人。やはりさすがは次期部長。こういった貫禄はしっかり持ち合わせているらしい。平和な光景に笑みを浮かべて見守った。そんな私の様子を見て、クラスの印象が変わりつつあることを私は知らない。