群集心理 | ナノ




決闘で勝利を手にした俺たち下級生は、明日の夏休みから更に厳しい練習が始まるのだという中でマネージャーを一人確保することができた。佐々木波江、1年D組で頭脳明晰、第一印象はおとなしそうな女子生徒だった。性格は機敏で洞察力もあり知識豊富。有言実行が座右の銘なのか(推測)、彼女は発言したからには必ず完遂しようと努力を怠らない人間だ。マネージャーの賭けを持ち出したときにはまだそこまでデータが収集できていなかったが、今ならわかる。正直、幸村が俺と出会ったときから口にする彼女の名前に興味があり、幸村をあそこまで虜にさせた人物をデータに残しておきたい。そう思ってただけだった。幸村の推薦もあって彼女をマネージャーにいれたが、に正解だったといえよう。


「平野君、ドリンク飲ませて!」


しかし、さすがに熱中症の手当てまで手際よくこなしたことは想定外だった。熱疲労だから救急車は呼ぶ必要がないとか一人呟いているが(声に出していることに気づいてないのだろう、頭ではそれほど慌てていたとみている)中学1年生ができる範囲ではない。
扉の外から見守っていたが、あの時の精市の複雑な顔からして佐々木に好意があることがわかる。
この16日間、佐々木がマネージャーになってからデータは増え彼女の言動も大方予想できるようになった。しかし、俺が言うのもなんだが、どうもできすぎている。中学1年生にしてはどうも完璧すぎる気がする。初日から仕事をそつなくこなし、疲労しているはずなのに部員への気遣いはちゃんと行き渡っている。部員全員の名前とポジションと組んでいるペアまで初日にはもう覚えていた。本人が言うには「何事もまずは名前から」らしい。あまりにも、できすぎている。


結論:データとしてでなく、俺個人として佐々木に興味をもった。

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