群集心理 | ナノ




「あの、幸村君」

「ん?」

「隣に座ってもいいですか」



なぜか敬語になってしまった。跡部君が手配してくれたバスの前に私たちはいる。立海へ向かう跡部君のバスに乗車する時前方にいる幸村君にそう声をかけた。一人で座るのもよかったが、不二君事件もあったしもっと自分からも行動に移そうと思ったのだ。すると眠くなったら肩かすよと幸村君は私の予想斜め上の優しさで振る舞ってくれた。やっぱり眠気に耐えられるはずもなく、結局幸村君の肩にまた頼ることになったんだけど。

肩を借りたまま本格的に眠った私は、現地に到着すると幸村君に起こしてもらった。もうその時幸村君の顔近いから心臓にすこぶる悪かった。ていうか幸村君睫毛結構長くてびっくり。

幸村君とバスを降りた瞬間堀さんに抱きつかれた。校門の前に集うテニス部は分かるけどなぜ堀さんが。おかえりを連呼する堀さんはマジ泣きしてた。


「寂じがった〜!」

「ごめんね。でも明日からは寂しくないよ」

「波江ぢゃん〜!!」

「なんか佐々木さん、男前になってない?」

「ぶふぉっ、高倉ナイスツッコミだわ」


男前と言われて嫌な気がしない私は、何となく高倉君にお礼を告げた。高倉君も平松君も、久し振りですごく新鮮だ。


「安心しな!ノート、とっといてやったぜ!」

「僕がね」

「ありがとう高倉君」

「え、ちょ、俺も社会とったから!高倉だけに礼言うのやめろって!」

「どうせ平松は字が汚くて読めないから、社会も見せるよ」

「本当にありがとう高倉君」

「ちょっ、ひでえ!」


相変わらずな二人に自然と笑いが漏れる。なんて長閑に思っていると、テニス部員と堀さんが目配せをしだした。堀さんはテニス部員とじゃなく平松君と仲がいいらしい。というか実は幼馴染みなんだと合宿前日にあっさり告白していた。全員がバスから下車したのを確認した部員は口を大きく開け、せーのと合図が放たれると声を揃えておかえりが校門前で響いた。

合宿も楽しかったけど、ああいうのはほんのたまにでいいんだ。やっぱりここが一番だと再認識した私は、笑ってただいまと言った。

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