群集心理 | ナノ




とうとう最終日になった。今朝はケータイのアラームが響き渡る5分前にすっと目を覚ました。ぐっと伸びをして歯を磨き、顔を洗い、日焼け止めを塗り、髪の毛を整える。寝癖が直らない髪には持ち運び用の小さいケープで固める。中学生とはいえど、こういう些細な身だしなみはきちんと正しておくべきだ。鏡とにらめっこして身支度終了。

部屋を出て真っ先に休憩所へ。ドリンクを作り、干していたタオルはたたんでかごの中へいれる。冷えタオルも作り終えて時計を確認すると6時半。いつもより一層、早く終わったなと満足。

ふう、と息をついて部室から出た。もう一回日焼け止め塗っておこうかなと考えていると、前方から見知った人物が現れた。



「あ、跡部君?」

「アーン?お前は確か佐々木だったな」

「うん、おはよう」

「ああ」



独特の眉毛を少し上げながら挨拶を交わす跡部君。正直、雌猫呼ばわりは気にくわなかったので名字呼びに格上げされていて嬉しい。特に用があったわけでもないので、またねと自室に戻るつもりだった。しかしなぜか跡部君は私を呼び止めた。



「今回は立海に勝ちを譲る結果となってしまったが、来年は必ず氷帝が勝つ」

「!」

「来年には指揮だけでなく信頼も得ている。今年以上に手強くなるぜ。王者氷帝に勝てたからと言ってうかうかしないことだな」



あっれ、王者って氷帝だっけ?立海じゃなかった?ほらだって漫画でも幸村君がラスボスだったもんね。んんん?え、なんかおかしくない?



「私たち立海は、全国大会で優勝したからと言って、気を抜いてるわけがない。むしろ皆、いつも以上に練習に励むようになった」

「……ハッ、言うじゃねーの」

「お褒めにあずかり光栄です」



茶化したようにそう言えば跡部君も口角を上げる。次も勝つ、そう視線で告げて今度こそ引き返した。

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